ナイルパーチの女子会 (文春文庫 ゆ 9-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2018年2月9日発売)
3.62
  • (159)
  • (320)
  • (280)
  • (76)
  • (18)
本棚登録 : 4032
感想 : 338
5

ブクログのレビュー読んでずっと気になっていた本。
本屋さんで気が向くと文庫本を探してたのだが、なかなか出会えなかった。3カ月越しでようやく遭遇でき、即購入。

多くの方がレビューで書いているとおり大変恐ろし〜い小説。心が抉られる場面が随所にあり、全身で反応してへとへとになる。

収入は高いが仕事はハードな大手商社に勤める志村栄利子(30歳)は、ダメな主婦のおひょうこと丸尾翔子のブログを読むこと。
偶然にも近所に住んでいた栄利子と翔子はある日カフェで出会う。同性の友達がいない二人は親しくなるが…おそろしいことになっちゃうんです。

主な登場人物は、栄利子も祥子も桂子も真織も結構極端。だから、あまり「女子だから」とか一般化しない方がいい。そりゃ、女子は怖い…かもしれないけどさ…。
というか、女子に限らず、男性でも、みんな少しずつ、他人へのいびつな期待を持っていて、そんな自分と戦いながら生きている。
負けたらストーカーになったり、人を激しく傷つけてしまうかもって、必死に頑張っている。

たいていの人は、辛うじてまともを保っている。
そんな感じなんじゃないのかな。

だから、親しい友達が持てなくても、それは別に自分のせいじゃない。
周りの環境のせいだ。

タイトルになっているナイルパーチという魚は、生態系の頂点に君臨し、他の魚が攻撃できないほど大型化する。繁殖力が高く水産資源として重要な役割を持つ一方で、侵略的外来種の指定を受けるなど管理が必要な魚とされている。
過去にヴィクトリア湖の生態系を破壊し尽くした、悪い魚だけど、それは人間が食用として放流したせいであって、ナイルパーチ自体に罪はない。

人間関係も同じ。

そう考えれば結構楽なのでは。

読みながら、
他人と過去は自分の思い通りにならない。
思い通りにできるかもしれないのは、自分と未来…なんてアドラー的なことが思い浮かんだ。

全体とおして、なかなか辛いんだけど、最後は少し救いがある。
僕はこの小説、とても好きです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年9月19日
読了日 : 2020年9月17日
本棚登録日 : 2020年9月15日

みんなの感想をみる

コメント 2件

naonaonao16gさんのコメント
2021/12/04

たけさん

こんばんは。

なかなかこの作品のレビューを書く時間がとれず、やっとあげられました。

ナイルパーチ自身ではなう、ナイルパーチがいた環境がよくないのであって、人間関係も同じ。
過去と他人は思い通りにならない。
まさにその通りですね。
環境を変えるか、自分が変わるか。

実はアドラー、読んだことなんですよね。

たけさんのコメント
2021/12/04

naonao さん、読まれましたか!

レビュー読ませていただきます!

僕もアドラーは「嫌われる勇気」みたいな初心者向け解説本しか読んだことないです笑

ツイートする