煙に巻かれて

  • 青土社 (2006年5月1日発売)
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感想 : 2
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嗜好品をめぐる本は、総じて難しい。単なるその歴史や文化の叙述では、わざわざ「その嗜好品」をピックアップした理由が不明瞭だし、逆に嗜好品をめぐる文化論やエッセイなんかだと、著者の好き嫌いが出すぎて読者は倦厭する。「好きな人」を対象にするという嗜好品の特性が招くジレンマだが、殊「タバコ」という極めて戦闘的なテーマでは猶の事だろう。さてこの本どうかしらん、というのが前置き。
著者は亡命キューバ人で、オールド映画マニア。亡命前はカストロのもとで映画の検閲に携わっていた、ポール・ララニャーガを愛する葉巻党である。ゆえに本書は、前半生の回顧、映画、ハバナ葉巻、カストロ、文学etc...取り留めのないジョークとオムニバスからなり、読者はまさに「煙に巻かれる」思い。だがそうして行間+ウィットの醸し出す煙を掻き分けながら読み進めていくと、いつしか葉巻&パイプを頂点とした欧米喫煙文化の精神的支柱が何であるのか、という核心に至れるというエライ本。なんなら翻訳者の方の努力もやばい本。欧米文明に於ける「タバコ」文化とは?を政治からチョッピリ離れて考えたい人はオススメ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年5月8日
読了日 : 2023年2月26日
本棚登録日 : 2023年2月19日

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