樅ノ木は残った(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2003年2月19日発売)
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本棚登録 : 1228
感想 : 93
4

読み終わった第一声の感想は、静かな男性はかっこいい。
主役の原田甲斐は、悪人として有名らしいが、私はそういった演目を知らずに読んだ。
この本では、悪人どころか、どこまでも自分を耐え忍び伊達家に尽くす忠臣。

伊達家の内部崩壊を狙う、幕府から延びる魔の手。
盟友2人と約束をし、原田は敵の懐に入って、切り崩す役を演じ尽くす。
そのあまりの飄々ぶりに、盟友からも疑念を抱かれることもあり、また仲良かった面々にも背かれ、その仲間が犠牲となって死ぬのを黙って見過ごしたり、盟友に先立たれたりとすごく辛い役柄である。

感情はあまり表情に出ず、冷静でありすぎるため、彼に恋愛感情を持つと辛い男性だと思った。

また、すごく人間関係が複雑。名前を覚えておかないと、誰がスパイだとか、この話はわざと相手方に筒抜けになる様にこの人を伴ったのではないかなどが分からなくなる。私は相関図を書いた。
そして、敵方の主従が探り出したことを話し合う場面が折に触れ出てくるが、誰が話しているかを明記していないので、最初はドキドキする。推理小説のようにどうなるの?という楽しみがあった。

伊達政宗の話を読んでからすぐだと、その頃からの存命の方が出てくるのでわかりやすい。また、3代目の家光までは政宗を厚遇していたのに、その変わりように、やはりというか徳川幕府の怖さを感じた。同時に、仙台はそれ以降は特に目立った藩主もなく、政宗の人間的魅力で保たれていた藩で、それも目をつけられる要因ではないかとも思い、いかに政宗の魅力が輝いていたかも感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2015年8月25日
読了日 : 2015年8月22日
本棚登録日 : 2015年8月14日

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