双頭の悪魔 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M あ 2-3)

著者 :
  • 東京創元社 (1999年4月21日発売)
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感想 : 388
5

読者への挑戦状×3。
面白いに決まってる。

3枚の挑戦状のどれもが美しい論理的推理によって解かれるものであり、端的に言うと、本作は、シリーズ1作目の『月光ゲーム』、2作目の『孤島パズル』の3倍の面白さと言える。

まず、小野殺し。
鍾乳洞の中を尾行するには足音や小野の持つ灯りだけでは不十分であり、尾行のために犯人は小野の傘などに香水をつけた。そして、傘に香水をつけられるのは八木沢のみ。
無嗅覚症を導く推理もカレーをめぐるちょっとした手がかりからの見事なロジックで、他の二つの殺人もそうなのだが、この小野殺しだけでも小説が一つ書けそうなほど。

二つ目、相原殺し。個人的にはこの推理が一番印象に残っている。
右肩を痛めていた相原は右尻ポケットに手紙を入れられない。また、相原は18時まで誰にも会っておらず、手紙を届けられる可能性があるのは、女将に編集長への手紙を渡した時のみ。
配達されることがなかった手紙を自由に覗けたのは室木のみ。(女将が手紙の相手だとしたら口頭で良いので手紙を送る必要なし)

三つ目、八木沢殺し。
犯人は忍び込むために音楽室のドアを開けたのに、向かいの部屋にいたマリアがピアノの音を聞かなかったのは、犯人が八木沢がピアノを弾く前から潜んでいたから。そしてそれができたかつその時間に香水を持ち出せたのは香西のみ。

本当にボリュームが半端ない。クローズドサークル内外で行ったり、間に隠れた仲介人がいたりなど交換殺人の扱い方もとても面白い。
間違いなく傑作であり、個人的な本格ミステリーの理想形と言えるかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年8月10日
読了日 : 2021年8月10日
本棚登録日 : 2021年8月10日

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