十字架のカルテ

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  • 小学館 (2020年3月13日発売)
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精神科医の主人公が被疑者の精神鑑定を精神鑑定のパイオニアの先生のもとで学びながら、過去に起きた親友の殺害事件と絡み合っていくお話です。
タイトルの十字架とは精神喪失者が起こした犯罪による責任の所在を表しています。
刑法39条に精神喪失者の行為は罰しないとなっています。

刑罰は、科される人にとって重大な人権の制約です。どのような意思で他人を死亡させたり傷つけたりしたのかを抜きにして処罰することは許されないという点からですが、この点はとても考えさせられました。頭では理解できても、実際に被害者側の当事者になったら、感情が追い付かないと思います。

心神喪失のため起訴できず不起訴になった場合は医療機関にて治療が行われ、不起訴以後は司法は介入せず、医療機関側にゆだねられます。制度の弱さが浮き彫りになっているといっても過言ではないかもしれません。

また本作は様々な患者さんを通して精神疾患の家族について描かれています。
私自身、精神疾患についてまだまだ理解が及んでいないことも反省しながら、いつだれが発症してもおかしくないこと、病に向かって真摯に対応する必要性を感じる一冊となりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年5月28日
読了日 : 2023年5月28日
本棚登録日 : 2023年5月28日

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