「広島、長崎の原爆投下は戦争終結のために必要だった」
小学生のころ、テストの答案用紙にこう書いてしまったのを35年たった今でも思い出し、後悔している。
他人と違う意見に惹かれるお年頃。
そのようなことを大人の人が書いた文章を目にし、深く考えず、なるほどな、と、鵜呑みにしてしまったのだ。
間違った認識による思い込み。
安易だった、と、自分の浅はかさに嫌気がさす。
この小説の登場人物にそんな浅薄な高校生は登場しない。
皆、真摯である。
アメリカの高校生たちの原爆投下についてのディベートバトルの小説。
父がアメリカ人、母が日本人、のメイが語り手となり、原爆否定派の立場からディベートする。
原爆否定派も、原爆肯定派も、できうる限りリサーチし、自分たちの主張に肉付けをしていく。
私は、日本人で“落とされた側”なので、否定派一択でいきたいところだったのだけど、肯定派の主張に、少し揺れてしまう。
しかし心の奥底では「でも、でも…!」と、叫びのような感情が渦巻く。
【あやまちは二度とくりかえしませんから】
原爆慰霊碑に記された、決意のような、宣言のような言葉を、私たち人類は守っていかなくてはならない。
小手鞠さんの小説は、『ラストははじめから決まっていた』に次いで二冊目。
二冊とも、子供たちに、これから人生をたたかっていくための武器を手渡しているような、そんな印象を受けた。
『ラスト〜』と今作は、“自分の思いを言葉に出来るようになること”“考えを人に伝えるにはどうすればいいのか”が、魅力的な小説の奥にあるような気がする。
英訳版含め、この小説が広く読まれることを願っています。
レビューを書いてくださった、さてさてさん。
心に残るすてきな小説のご紹介、ありがとうございました!
- 感想投稿日 : 2023年5月25日
- 読了日 : 2023年5月25日
- 本棚登録日 : 2019年8月16日
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