「できる人」はどこがちがうのか (ちくま新書 304)

著者 :
  • 筑摩書房 (2001年7月18日発売)
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一芸に秀でた人は、みな何か重要な共通の認識を持っている、としばしば言われる。ある道において、相当なレベルまで上達をした人は、上達一般についての認識を得ているように思われる。また、何をやらせても上達が早い人がいる。このような人は、たとえ運動神経がそれほどよくなくとも、様々なスポーツにおいてある程度のレベルまで上達するのが早い。一方には、何をしても先が見えずに途中で挫折してしまいがちな人がいる。

上達を根底から支えるのは、「あこがれ」である。これがなければ、上達に勢いはつかないし、そもそも上達することの喜びが生まれてこない。藤子不二雄が手塚治虫にあこがれたように、あこがれが根底にあれば、上達の意欲は湧き続ける。「あこがれ」や「志」のスケールが器の大きさだとも言える。

この本で主題としたいのは、あることがうまくなるということよりも、自分のスタイルを見つけていくということそのものだ。やっていることが様々なジャンルに分かれていても、そこにある一貫したスタイルというものが感じられることがある。自分のスタイルを持つことができるということは、非常な喜びである。

自分の得意技を自分で認識し、それをトータルにコーディネイトしていく。その原理、工夫を支えるのがスタイルという概念である。自分のスタイルを練り上げていくこと。このことは、単に何かが上手くなること以上に、人生において重要な意味を持つ。上達の秘訣は、スタイルに対する意識を育てることである。 自分のスタイルを実感できると、自分の生を肯定できやすくなる。自分の得意技を磨き、自分のトータルなスタイルを表現できることによって、自分の存在感を十分に味わうことができる。「上達の秘訣」は、この生の充実感を味わうための、いわば梯子である。
では、この変化の激しい現代日本社会において、大人が子どもに伝えるべきものとは、何なのだろうか。 端的に言えば、それは、「およそどのような社会に放り出されても生き抜いていける力」であろう。
私が考えるに、この「生きる力」とは、「上達の普遍的な論理」を経験を通じて〈技化〉しているということである。どのような社会にも仕事はある。たとえ自分が知らない仕事であっても、仕事の上達の筋道を自分で見出すことができる普遍的な力をもし持っていれば、勇気を持って新しい領域の仕事にチャレンジしていくことができる。
彼の言語の学習の仕方は、徹底的に自学自習主義であった。テレビやラジオから言葉を聞き取り、それをノートにとって反復して覚えたり、積極的に日本人と話すことによって実践的に会話力を鍛えていた。向学心にあふれ、分からない日本語があるとどういう意味なのかとすぐに聞いてきた。
よくみてまねをすればいい

うまいひとのやることをよくみてそのわざをまねて盗む、これが上達の大原則である

盗むべきポイントを絞りこんで見つめる。

技を盗むちからは暗黙知を自分の認識力で自分にとっての形式知とし、暗黙知へとしみこませる作業である

技を盗むということは段取りを盗むということでもある。自分自身で段とりが組めるようになるまで修練する。これは同時に段取り力を鍛えることにもなる。

うまい人のやることをよくみてその技を真似て盗む。これが上達の大原則

要約の基本は肝心なものを残しその他は思いきって捨てることにある。捨てるといっても全く無意味にしてしまうわけではなく切り捨てたものが残されているものに何らかの形で含まれているような関係を保っているのがベストである、要約力とは常に重みづけを意識していることである。

どうしても決定しなければならないことを最初に明確にしその決定に必要になる範囲内で質疑応答が簡略に行われるという手順が基本

要約力の基本は八割がたの重要度もった部分を見つける習慣である

最重要の技に全エネルギーを傾注する

本は行きだおれるものというぜんていでとりくむことによっておおくのほんがきゅうしゅうできるようになる

全体の二割の部分をよんで内容の八割がたを押さえる

ニッパチ方式
そこの部分をしっかり読めば本の八割がたをつかむことができる。そのような二割をえらびとろうとすること。そうした意識をもつこと事態が要約力をたかめる

重要なことがらが向こうからめに飛び込んでくるという間隔をもっていることが多い


幹となる問いを設定する習慣をつけること。
本を読む前にあらかじめ三つほどのキーワードを設定することによってばらぱらとめくるだけでもそのワードが飛び込んできやすくなる
キーワードは太い幹のような磁石の働きをする。キーワードが向こうからめに飛び込んでくるようになるための練習法としてはパラパラとめくりながらキーワードがでてきたらさっと丸をつける方法が効果的

彼のとったやり方は自分のプレースタイルをまぐしっかりきめ、そのプレイスタイルからしてもっともしよう頻度の高い技術を徹底的に磨くというやり方だった

私がインパクトを受けたのは彼が試合でも練習同様にハードヒットできるということであった
いろんな技術をもっていてもマッチポイントを握られた時のように重要な場面では信じて使うことのできる技はせいぜいひとつや二つ。練習と試合都のギャップの少なさをまのあたりにして技を限定して磨くことの重要性をいっそう痛感した

通常技の会得には一万~に万の反復が必要だとされている。これだけの回数の反復練習を行うためには基本となる技を限定する必要がある。その基本技のなかでももっとも重要な古書をまた選び抜いてそこを集中的に反復練習する。これが技かのコツで湯

彼の質問力の高さである。
彼の主な関心はてにすの全技術をまんべんなく習得することにはなく、試合に勝つことに会った
そのためにはプレイスタイルの確率が必要でありそれの中心となる得意技を伸ばしてきた

スマッシュを安定させるコツとバックハンドでのストレートへのパッシングショットのこつ
彼のかだ飯石きの明確さ 
自分自身でジグソーパズルをある段階まで苦労して組み合わせてきたプロセスがあってはじめて一言のアドバイスがパズル全体を完成させる位置ピースになりうる

ぱずるでいえばそれを教えれば残りのピースをとうじんがくみたてることができるような鍵のピースを見つける作業だ

いくつか直すべきポイントがあるなかで各となるポイントを見つけ出すことがアドバイザーにもとめられる力量だ

静観とはみるだけではない。みてチャンスを待つという意味
仮に選手が間違った動きをしていてもそれがあとにどういう形でぎじゅつにきいてくるのか、これは瞬時にだめだと判断で似ないから。何をいつ言うのか、そのたいみんぐをまつ、そのタイミングとは選手ほんにんに潮が満ちるように課題が見えてきたときだ

癖を技に返る、くせのわざか
高い技術を追求する人間に精神は後からついてくる
何をどう返るべきかを指示できるのもアドバイザーの重要な能力ではある。しかし一方でかえなくていいもの変えてはいけないものを教えてくれる存在も大変に貴重
上達の秘訣は自分の癖やスタイルをわかってくれていてタイミングよくアドバイスをしてくれるパートナーや支障をもつこと
例え自分の映像であってもそこからなにかを盗むという意識で望む
写真の意味はみるものの観点と写真との対話関係においてうまらる
脳の中のイメージとしてじぶんのすがだきゃっかんてきににとらえるということは達人の技
めを前にみてこころをうしろにおけ
高速で矛盾を連続処理していく彼の身体
常に見通しと、バランスをテーマとして意識し続けることによって技かしてくる能力

おなじものをまねしているとおもって結果として違うものになっているというのではなく、違いを性格に認識しているということ
自分のなかで技術がどのような変形作用を被るのか、を的確に認識する力が上達にとってじゅうよう
肩を何度も反復練習するのはそうした無意識に生じてしまうずれにたいして敏感になりずれを修正する認識力を育てるためである
自分は今なんのためにやっているのかということについての正確な認識力を育てることが上達の秘訣
たまの握りやふりだすときのひじと手首の関係といったものはミクロ的支店、ひとつの技術が自分のプレイスタイル全体のなかでどのような位置をしめるのかを認識するのはマクロ的支店
何のためにその技術が必要であり、その技術が自分の全技術のなかでどのような位置をしめるのか

癖や習慣を全て捨ててしまうのではなく全体のなかで、効果的な技になりうる可能性のあるものをアレンジして技として鍛えなおすのが癖の技かというコンセプト

上達の理想のプロセスはベーシックな力を身に付けたうえで自分の癖を技かして得意技となし自分のスタイルを確立することである

上達の究極の目的は自分のスタイルを確立することである

そのものひとつにセザンヌの世界の見方解釈のしかたが込められている

世界の書き方だけではなく世界の見方そのものにもせざんぬの一貫した変形作用が働いている。スタイルはもののように固有かしたものではなく、活動において生きて働く原理

Fは各画家のスタイル

絵画におけるスタイルとはその画家がはじめて示した世界と新しい人間の見方

自分がスタイルを作っていくときにスタイルの模範とするものが先行者である。自分にとって誰がせんこうしゃであるのか。この問題意識を保ち続けることが上達の秘訣である。
わだばゴッホになる。

ビデオや連続写真を何度も繰り返し分析しながらみてひとつひとつのうごきやぎじゅつをぶんせつかしてとらえることが必要

あこがれにあこがれる関係性


フーシェは自分自身の特性を知っていた。ナポレオンのようなカリスマ的魅力があるわけではないが、雰囲気をかぎ分ける鋭敏な感覚はもっている。その特性を冷静に認識し徹底的にスタイルにいかした。

影に隠れている自分が一番強いことを知っていた。



分けても沈黙の技術堂にはいったトウカイ術
心底を見抜き気持ちを汲み取る心理的堪能がそれである
スタイルかんコミュニケーション

技術のことは得意だが、代金の回収や金作りといった金に関することは比較的苦手としていた本田にたいして藤沢は金のこのは任せておける男であった。
藤沢は本田にないものをもっており、考え方もかなり違う。しかし違うからこそ、パートナーとして組む価値があると本田は考えた
お互い知らぬことについては干渉せず相手をしんじきって任せたこと
藤沢とてを組んだことが決定的だった。あれはすばらしい人で私の人生を変えた

このようにして徹底した技術やスタイルの本田を経営的な面から藤澤が支えるというクリエイティブなスタイルかんコミュニケーションが成立した

勝とうとして売ってはいけない、負けまいと打つべきである。どのてが負けないかと考えその手を使わずに一目であっても遅く負けるてを選んでいくべきだ

あやまちは簡単なところになって必ず起こすものです

恥ずかしがらずに上手なひとのなかにまじって実践すること

その道の決まりをはずさずにしっかり持続させること

過ちの兆しを細かな点から察知する力、これが達人の力

ファーストのときに、一級しかもたないよう「くふう

初心の人二つのやをもつことなかれ、はじめのやになおざりのこころあり

後では小さな利を捨てて大きな利に向かうことが必要。
あちらこちらを適当に掘ってみるのではなくて、これと思い定めた一点に全勢力を傾注して深く岩盤を貫いて掘り進むことによってつきることのない泉をえる井戸堀のししつである
道を極めるということは単にその領域の事柄が出きるというだけではなく、ある種の境地をも獲得する
つまらないことでもいいからひとつの道を極めたものはなにかをつかんでいる
上達するためには自分がまだ会得していないことに対する予感やビジョンをもつことが重要。それを会得するための練習メニューをたてることができれば上達は確実性を増す。

ここで強調したいのはさまざまなものを上達論のテキストとしてみる習慣そのもののことである
重要なことはこうした上達論的な観点を日常のさまざまな活動のなかで習慣かし、技かすることである
技を修得かするためには繰り返し練習し量か質に添加する瞬間を逃さないことが重要である
のうのこまわりを増やすためには早い店舗の集中した環境にみをおくのが早道

頭の中の作業員何人起きてるか

脳のギアチェンジという感覚
自分の意識の状態にたいしての意識を性格にもつ習慣をつけること

写真はカメラマンと被写体までの関係までをうつすもの
被写体との間にクリエイティブな関係性が成立すること
自分を目覚めさせるきっかけを自分の直感や身体感覚を手がかりにして差がし続けること。これがインスピレーションをうむこつ
結城を技かする

一流とよばれるレベルの人は誰でもが自分自身を上達させるコツをもっている。また一流の人間のしかたにはその人独自のスタイルをもっていることが多い
基礎的な技術をマスターして、そのうえで自分の得意技をもち自分らしさを発揮できるそうしたスタイルを確立していくこと
朝早く起きて夜は約寝て運動をして体力もつくる
曲がりなりにも小説かになれたんだからとことんやるしかないよな?だから根性を据えてとにかく体をびしびし鍛えてやろうとそう決心したんだ
不健康なものや毒をとりだしてくるためには体そのものが健康でなくては行けない
技においては同じことの繰り返しが量的に積み重なるとあるときに質的な変化がおこる
村上は集中力と持続力というのはコインの表と裏だという。どちらも鍛えれば互いを強めあう
最初のにヶ月半は毎日つ久江ノ上に座ってとにかく何でもいいからかく。のらなくても楽しくてもとにかくどんどんかいていく
仕事をしていて集中にはいるのがわかるときがある。それまでの時間がその言わばゴールデンタイムにはいるための除草機かんであるような、そうした高い集中上体がおとずれることがある
肝心なことは高い集中の坪が来ることを確信できていること、その確信によってそこまでのしこみの期間を耐えることができる
よく賭け事をやる人でつぎにどんなふだがでてくるのかすっとわかっちゃう人がいるね、それににている
音楽を流用して文章を描く

ランニングを本格的に始めた動機はたいりょくの問題である

自分のからだのリズムと仕事のリズムを重ね合わせていくところに上達の秘訣がある
画家が描く文章って情景がとてもきれい
いきのながさ、つよさは凡そどんな仕事にも必要
上手につかれることができれば上手に眠れる、上手に眠ることができればうまく起きることができる

エネルギーの燃焼は大問題でありその燃焼のしかたには知恵がいる
心地よい疲れの感覚、この感覚は私たちに生きている充実感と共に安らぎをあたえてくれる
心安らかに眠りに落ちていく一番の好条件はしんしんの心地よい疲労感だ、この疲労感を習慣化し技かすることができればいきる上での基本技となる
過剰なエネルギーを費やし充実感のある拾うに至るには上達しようとする意識は王道となる
上達することのおもしろさは自分の技を身に付けることができることにある
アリのままの自分よりも技を身に付けた自分のほうが重んじられてよいのではないだろうか
段取り力や盗む力あるいはスタイルといった言葉を用いるだけでも自分のなかに埋蔵されている上達の体験が鉱脈として掘り起こされてくる
上達の普遍的な論理を捕まえているからこそ新しい領域にたいしても結城をもってチャレンジすることができる。そうしたバックボーンをできる人はもっていると感じた
些細なことでもいい、そこでの上達の経験を普遍化しつつ、他の領域の上達方へと応用していけることができる人とそうでない人との違いであると考えた
目指すべき自分のスタイルの中でその練習がどのような意味をもつのかをかんがえるようになる
新しいように見えるアイデアの多くは全く別の領域のコンセプトや記述の転用、アレンジ空埋まれている
りょういしまたぎこしということじたいがひとつの技である。習慣化することによってうまくなっていく。
別領域であっても自分とにたスタイルでやっている人たちの工夫を転用すること 
方は上達の論理を具現化したもの。方を行うことによって自分のなかに自分をチェックする基準が埋まれ事故との対話が可能になる
本当に必要な力とは真似る盗む力、段取り力、コメント力、という三つの力と、スタイルというコンセプト
ひとは一般的に何かに上達しているという充実感をもっているときはむかついたりきれたりしにくいと考える。
上達への憧れと確信をもって生活しているときにはエネルギーをうまく循環している

領域を跨ぎ越すビジョンをもつとき同じことがらでも全く意味が変わってくる

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年4月22日
読了日 : 2023年4月21日
本棚登録日 : 2023年4月22日

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