疾走 下 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店 (2005年5月25日発売)
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感想 : 736
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痛い…痛すぎる…(༎ຶ⌑༎ຶ)



この手の小説は、読んでいてとても辛い…。
苦手分野です。

15歳の少年シュウジが背負った運命が辛すぎるお話です。

彼の住む干拓地がリゾート計画で変わってしまうのと同時に、優秀でプライドの高い兄が犯罪に手を染め、家族が崩壊していく。

干拓地の教会で聖書を手にして以来、聖書の言葉が引用されながら話が進みます。

中学生になったシュウジは兄の犯罪が原因で、学校で酷いいじめにあいます。

ーーーーー

おまえは思い出す。いつだったか、あの頃はまだおまえの「親友」だと言っていた徹夫と、教会の講話会で教わったことを話したのだった。
「孤立」と「孤独」と「孤高」の違いについて、だった。
仲間が欲しいのに誰もいない「ひとり」が、「孤立」。
「ひとり」でいるのが寂しい「ひとり」が、「孤独」。
誇りのある「ひとり」が、「孤高」。(中略)
おまえは、まだ自分の「ひとり」が三つのうちどれに当てはまるか、わからないでいる。
(本文より)

ーーーーー

誰かと繋がっていたい。と思ううちは孤独です。

社会から孤立した時に思い出しそうな言葉。

神父には弟がいて、人を殺した犯罪者です。
弟が、シュウジに会いたいと言ったのです。

シュウジは空っぽの彼を見て衝撃を受けます。

ーーーーー

「俺たちは、同じ、だ」
(本文より)

ーーーーー

自分の恋人一家を殺した弟は、からっぽの、穴ぼこのようだった。

多感な年頃の中学生には影響が強すぎる…。

弟が言った言葉も描き方が秀逸。
魂の宿っていないセリフということが読んでいて伝わってきます。
痛い…(T-T)


まさに「疾走」というタイトルがピッタリ。

過酷な人生を駆け抜けた少年の、衝撃のラスト。

いつまでも心に残る作品だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月18日
読了日 : 2023年7月18日
本棚登録日 : 2023年7月18日

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