永遠の0 (講談社文庫 ひ 43-1)

著者 :
  • 講談社 (2009年7月15日発売)
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5

特攻とは、非人道的な恐ろしい作戦。

特攻要員は本当に死を恐れなかったのか—。

改めて戦争について考えさせられる作品。




私は『永遠の0』を実話だと思って読んでいました。

しかし違ったようで、特攻作戦に関わった実在の人物のエピソードをオマージュしている小説です。

大筋はフィクションですが、登場人物は実在するので、特攻隊を中心として見た太平洋戦争の様子を知ることができます。
(小説であるという事を忘れてはいけない。真実を知りたければ記録を読み学ぶべし。)

太平洋戦争を生き残った零戦パイロット、坂井三郎中尉の実戦の記録『大空のサムライ』が元になっているようです。


死んだ実の祖父の生涯を調べる事になった主人公健太郎。

戦友会で祖父の事を知っている元軍人達から祖父の素顔が語られる。

「臆病者」と言われた祖父が生に執着する理由。

それは、愛する妻と娘のためだった—。

ラストは意外な展開でした。


私は実在の話だと思っていたので、ラストを読んで「あれ?」と違和感を感じました。

あまりにも出来すぎな展開…。

フィクションでしたら、納得です。

泣きました…。
ラストで…と言うよりは、海軍の特攻隊に対する仕打ちの酷さに涙が出ます。

軍人達の非人道的な扱いや悲惨さは描かれているものを上回る見方をするとしても、私たちの想像以上に辛い経験であっただろうと思いました。

戦後民主主義国家となり平和な時代を生きる主人公(健太郎)は26歳。
特攻で亡くなった祖父(宮部久蔵)の生涯は26年。

生きて帰りたいと願う宮部の軍人として弱腰な態度に、部下達の評価は冷たい。

元海軍飛行兵曹長、井崎源次郎が病院で語った話。

ーーーーー

「たとえ敵機を撃ち漏らしても、生き残ることが出来れば、また敵機を撃墜する機会はある。しかし—」
小隊長の目はもう笑っていませんでした。
「一度でも墜とされれば、それでもうおしまいだ」
「はい」
小隊長は最後に命令口調で言いました。
「だから、とにかく生き延びることを第一に考えろ」
この時の宮部小隊長の言葉は心の底にずっしりと響きました。
(本文より)

ーーーーー

生き延びなければ無駄死にである。

祖父の生き方、考え方を知り主人公は成長します。

日本軍の戦術である特攻は、零戦で突撃するだけではありませんでした。

人間が操縦するロケット爆弾の『桜花』
人間魚雷の『回天』
(回天に関しては最近知りました。この小説ではあまり触れられていませんが、名称は出てきます。)

よくもこんなに非道な作戦を考えだしたなと思うほどです。
100%生きて帰れません。
これらを操縦する為、若い兵士達が一年かけて特訓するのです。

死ぬための訓練なんて、どんな気持ちか想像もできません。
当時はそれが当たり前という教育が施されていました。

特攻も志願という形をとっていましたが、希望しない申請をした兵士は上官に呼ばれ説得されます。
最終的には半ば強制的に志願兵という事になるのです。

桜花に関しての作中でのエピソードは心を抉られます。

(アメリカのスミソニアン博物館に展示されていた『桜花』を見た岡部。
そこに書かれていた名前は『バカボム』だった。)

ーーーーー

「BAKA-BOMB、すなわちバカ爆弾です。私は息子夫婦が隣にいるにもかかわらず、声を上げて泣きました。悔しくて、情けなくて—いくら泣いても涙が止まりませんでした。しかし本当のところは、『BAKA』そのものずばりだったのです。すべての特攻作戦そのものが、狂った軍隊が考えた史上最大の『バカ作戦』だったのです。しかしそれだけで泣いたのではありません。そんなばかな作戦で死んでいった高橋たちが、ただただ、哀れで、哀れで、涙が止まらなかったのです」
(本文より)

ーーーーー

帝国主義思想の当時、反対の声を上げることなんて軍部に反する行為。
とてもできません。

酷すぎて泣けてきます。


私達が中高で教わった『歴史』は、近代になるにつれ大雑把な印象です。

大昔の歴代将軍名や年号の暗記等は何かの役に立つのでしょうか?
教員や作家になればもちろん暗記していて当たり前なのかもしれません。
ですが大抵は役に立ちません。

時代の流れを知ることは大切ですが、現代に最も近い時代に重点を置くべきだと思います。
道徳や総合の時間に、学ぶべき事はたくさんあったのでは?と今となっては疑問です。


この小説は、フィクションという形であっても、特攻隊目線での太平洋戦争の悲惨さが流れでわかる1冊となっています。
子供達が手に取って読んでくれるなら、エンタメという形であれど、必要なのではないかと思いました。



読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月6日
読了日 : 2023年6月6日
本棚登録日 : 2023年6月6日

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