古手屋喜十 為事覚え

著者 :
  • 新潮社 (2011年9月22日発売)
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本棚登録 : 222
感想 : 21
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私にとって現役の時代小説作家の中では最も安心して読める作家である宇江佐さん、久々に手に取ってみました。江戸浅草の「日乃出屋」という名の古着屋を舞台とした6編からなる連作短編集。主人公である喜十の人柄が他の宇江佐作品の主人公ほど魅力的に映らないのが少し残念ですが、周りを取り巻く妻のおそめや隠密廻り同心で喜十に為事(仕事)を振ってくる上遠野平蔵が魅力的でカバーしている感じですね。
他の宇江佐作品よりもミステリー仕立てな面や暗い話も多いのであるが、やはり人情話的要素の強い「小春の一件」が秀逸であろう。最後に捨て子が子供のいない喜十夫婦の店の前に捨てられる話があるのだが、二人の結婚への馴れ初めからしてこのまま自分たちの子にしてより夫婦の絆を深めて欲しいなと思ったりした読者も多いはずである。
小説新潮に連載されたのもですが、三カ月ごとに一話ずつ書かれている。そのあたり律儀できっちりとした作者の人柄が窺い知れる。
。季節感が滲み出ているのにも一役を買っているのであろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宇江佐真理
感想投稿日 : 2012年10月30日
読了日 : 2012年10月26日
本棚登録日 : 2012年10月25日

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