伊坂幸太郎さん著、殺し屋シリーズの二作目。前作「グラスホッパー」ではある程度の殺し屋達の苦悩や混乱が読み取れたが、今作品は大きくエンターテイメントに振り切った様な作品だなと感じた。だがそのエンターテイメントが抜群に面白かった。
舞台は東北新幹線「はやて」東京~盛岡間の約3時間の幹内。クローズドサークル系とも違うなんとも形容のしようがない状況での物語。そこに殺し屋達が集結し物語が展開される。しかし何故か暗黒さや物騒さはあまり感じない。伊坂マジック全快で殺し屋達の内面や言動がポップでユーモラスに描かれているからだろう。
今作品は木村、果物(蜜柑と檸檬)、天道虫、王子の4人が物語の主軸。そこに別の殺し屋「狼」「スズメバチ」「木村夫妻」も加わる。前作の「鈴木」も搭乗している。更に「槿」も絡む。凄すぎる。
読後、作品名「マリアビートル」、天道虫の事が気になった。前作の鯨や蝉や槿にも意味を感じていただけに何かあるのでは?と調べてみた。
「幸運」「出会い」「幸せの象徴」「死者の生まれ変わり」「復活」等々。なんか全て今作品に意味が含まれている気がする。作者の知識量に脱帽、流石だなと感じる。
その中でも「ナナホシテントウ」=運気が変わるというのも見つけた。
不運続きで描かれていた七尾だが、生き残りやはり「幸運」なのだろうと読み取れる。最後の檸檬からもらったくじ引き券がそれの象徴かな?くじ引きして当たったのが果物(みかんとレモン)。「死者の生まれ変わり?」「復活?」笑える。
もしかして蜜柑と檸檬っていう人物像も芥川龍之介「蜜柑」と梶井基次郎「檸檬」をなぞらえているのかな?
考えれば考えるほど奥が深すぎる。
最高のエンターテイメントだと感じた。
次作の「AX」も大きく期待している。
- 感想投稿日 : 2023年11月10日
- 読了日 : 2023年11月10日
- 本棚登録日 : 2023年10月30日
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