雨に消えた向日葵 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎 (2022年3月9日発売)
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本棚登録 : 590
感想 : 69
5

吉川英梨さん著、「雨に消えた向日葵」

最高の作品。
今まで読んできた刑事物の物語で一番面白かったと感じている。
こんなに夢中で物語を読み進めたのも初めてかもしれない。

なんだろう、なんとも言えない表現の仕方が難しいもどかしさと不穏さが多方面から常に感じさせられる作品だった。そしてその何もかもが奥深すぎる。

失踪事件、捜査、手掛かりがつきていく様子、本部解散。そこに纏わる被害者家族の物語、事件に携わる警察官の苦悩。交わってくる協力者。反対に沸き立つ様に沸いてくる非難抽象、野次馬、詐欺。SNSやテレビ報道による知人の反応と世間の反応。物語の進行はその全部が同時に大きく渦巻くように罷り起こりながら進んでいく。
その大きな渦巻きが様々な不穏さを生ませ、読者を色んな方角から刺激してくる感じがたまらない。

そして事件後捜査が進むにつれ、同時に被害者家族の家族愛も発展していく。石岡家の父、母、姉は共通した家族の目標がこの事件きっかけで明確になる。家族愛が透明に深まっていく。それはなにも家族愛だけでなく姉に至っては一人間としても成長している。父親も同様、親として成長していく感じが読み取れる。
そこに奈良の兄妹の話もリンクしてくる。だからこそ、この事件があったからこそ奈良の兄妹の最後の話もグッと心が動かされる。

最高の作品。次作もあるらしいので明日早速買いにいこうと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月3日
読了日 : 2023年12月3日
本棚登録日 : 2023年11月26日

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