生体解剖という医学の暴力と無反省を糾弾する折戸が、記事の暴力により人を殺し、その現実を受け入れようとしていないという構造が、冒頭の「泥棒が泥棒をつかまえ」たことに似て滑稽に思えた。
遠藤が、彼を含めた若い世代の人間に「距離を置いて対している」[427頁]ことも相まって、私は彼らに対して愛着を持って接することができず、正直に言えば「救いようのない」と思えてならなかった。
ただ、幸運なことに、折戸には野口という気づきの種となる人物がいる。勝呂に後日談があったように折戸にも後日談があるならば、野口は「救い主」になれたのだろうかと想像した。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
9 文学
- 感想投稿日 : 2024年4月2日
- 読了日 : 2024年4月1日
- 本棚登録日 : 2024年3月16日
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