以前に夏目漱石の「虞美人草」を読み、登場人物の相関が複雑で、4分の1程度で挫折してしまったことがあります。本書の吉本氏の解説がわかりやすく、「虞美人草」を再挑戦したくなりました。
恥ずかしながら、私は教科書に載っていた「こころ」を読んだことしかなかったので、漱石の数々の著書について特徴などを知れて勉強になりました。
漱石の小説では度々、漱石自身を投影している人物・強気な女性・古風で控えめな女性が登場するそうです。同じようなキャラクターが別の小説でも登場するので、何冊か通して読むと小説の魅力がより伝わってきそうだと思いました。
以下、「虞美人草」の登場人物まとめです。(ネタバレあり)
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◆「虞美人草」登場人物
甲野 藤尾(主人公):
傲慢な女性。小野さんが将来の夫になると思っている。親の口約束で、宗近が許嫁だが、宗近をバカにしていて一緒になる気はない。
小野 清三:
学校を出て学位論文を書いている。藤尾と仲良くなり、好きになる。貧乏な頃、京都の井上狐堂先生の書生をしていた。先生の娘の小夜子と結婚させられそうになるが、その気がない。
甲野 欽吾:
主人公の藤尾の義兄(異母兄弟)。哲学科を卒業。何もしないでブラブラしている。神経衰弱でおかしい変人扱いさらる(漱石の面影を投影)。遺産相続を放棄。
宗近 一(はじめ):
甲野欽吾をよく理解している親友。きっぷはいいが、劣等生で外交官試験に落第ばかり。親の口約束で、藤尾が許嫁。藤尾が好き。
宗近 糸子:
宗近 一の妹。甲野欽吾のことが好き。古風で控えめ(漱石の理想の女性像?)
井上 小夜子:
小野清三の先生である、井上狐堂の娘。父である狐堂先生と小夜子は、小野が夫となり、一緒に住む事を既定の事実としている。(理由:書生時代から小野の面倒みていたから)
最後に、小野と小夜子が結婚し、藤尾は宗近に結婚の約束の金時計を渡すが、暖炉で砕かれる。藤尾は傲慢さをへし折られ自殺してしまう。
◆本書より一部要約
『虞美人草の藤尾が自殺しなければ、三四郎の美禰子という女性になる。虞美人草の糸子ににあたるのが、三四郎では妹のよし子。坊ちゃんでは清になる。』
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【余談】
本書のp.109 で、バルザックの「谷間の百合」と、
ゲーテの「若きウェルテルの悩み」が第一級の恋愛小説と紹介されていました。
偶然にも、先日読んだばかりの田辺聖子の「大阪弁ちゃらんぽらん(p.115)」で、同じ2冊が『しんきくさい恋愛小説』として記載がありました。
夏目漱石の描く三角関係の小説も、大阪弁でいう『しんきくさい』分類になるのでしょう。
- 感想投稿日 : 2022年3月15日
- 読了日 : 2022年3月5日
- 本棚登録日 : 2021年2月7日
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