家族って何だろう。
二人が出会って家庭を持ち、子供が生まれやがて大人になり、再び二人だけになっていく。今まで寄り添ってきた者に、いつかは先立たれ一人残されて何を思うのか。
若かりしころの情熱、子育てに奮闘しながら互いに腹を立てることもしばしば。我々は言葉で、時に言葉に表せない思いでお互いを理解し、家族を営んできた。
お二人共に歌人である、河野裕子、永田和宏もまた、我々と同じように出会い、悲しみも幸せも、40年の時間を共にしてきた。だが、彼らには短歌があった。お二人の出会いから最後の別れの時まで、どれほどの相聞歌を交わしてきたのだろう。
私は短歌を深く味わう力を持ち合わせていないが、お二人が交わした相聞歌と、背景となる散文から、互いに魅かれあったときの思い、きびしい生活の中で子供を育てる苦労と、ふとした瞬間の幸せな感覚が伝わってくる。
残念ながら、河野裕子は晩年に癌を患い、家族の見守る中瞼を閉じていきました。
最後の最後まで、家族を愛し、自分の歌を愛した歌人。
「手をのべてあなたとあなたに触れたきに
息が足りないこの世の息が」
忘れられない一首です。
残されたものもまた、喪失のうちに悲しみを歌にします。
「亡き妻などとどうして言へよう手のひらが
覚えているよきみのてのひら」
近代短歌の世界には縁遠かったのですが、ブクログのレビューを読んで出会った本です。このような本との出合いをとても幸せに思います。
追伸:我が家の喧嘩後のお約束はケーキを買ってくること(自分が悪くないと思っていても・・・)
- 感想投稿日 : 2014年5月17日
- 読了日 : 2014年5月17日
- 本棚登録日 : 2014年5月17日
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