イタリア在住の内田洋子さんがクラウドファウンディングで作成した本。
14世紀のジョヴァンニ・ボッカッチョ『デカメロン』の2020年版という企画。
(デカメロン...1348年に大流行したペストから逃れるためフィレンツェ郊外に引きこもった男3人、女7人の10人が退屈しのぎの話をするという趣向で、10人が10話ずつ語り、全100話からなる)
イタリア各地に住む17歳から29歳の24人の若者が、2020年3月10日〜5月27日までの期間、文字でも写真でも絵でも空白でも、自由な方法で自分の状況を語っているものが集められている。
昨年、イタリアは他国に先駆けて大変な状況になったと記憶している。春先、外出禁止令がいち早く出され、ロックダウンの約2ヶ月間をイタリアの若者がどのような日常を過ごし、何を感じていたのか、その一端に触れられる本。アートブックのような作りで、コロナ禍という状況を除けば、非常にお洒落な見た目の本になっている。
イタリアの日常生活や現地の若者の考えていることに、写真と共に触れられるのはとても興味深かった。誰もが経験したことのないロックダウンの渦中に同時並行で集められた声は、後からでは決して得られない大変貴重な記録だと思う。イタリアだけでなく、色々な国で同じ企画をしたらどうだっただろうなどと思った。
元となっている古典の『デカメロン』を読んでいたら、当時との共通点や違いが分かり、より理解が深まったのではないかと思う。いずれ古典の方も挑戦したい。また、『デカメロン』は、感染症の大流行によって当時の社会規範や慣習が破壊し尽くされた様子が語られる一方で、若い10人の男女が感染症から逃れて生き延びようとする姿を通じ、人類は己の力と知性によってどんな状況も切り抜けられることを示している、という。内田さんは現代版デカメロンをつくることで、この困難もいずれ必ず切り抜けられるということを表したいのだろう。
- 感想投稿日 : 2021年1月25日
- 読了日 : 2021年1月25日
- 本棚登録日 : 2020年11月25日
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