異常快楽殺人 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (1999年8月10日発売)
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『悪魔のいけにえ』『羊たちの沈黙』『IT』といった有名ホラー映画のモデル、素材ともなった、特異な犯行で知られる七人の殺人者たちを、記録をもとに調べあげたノンフィクション集で、それぞれに40ページ前後があてられている。彼らの犯行や成長過程における出来事や警察による捜査などを、グロテスクな描写を得意とする作者が、周囲の人物や犠牲者のセリフもまじえつつ小説風に仕立て、読み手に臨場感を与える点が大きな特色。そのほか、各章ごとに類似の犯罪者や、犯罪心理の分析などを紹介しながら、各人の特徴を解説する。

本書のテーマとホラー作家による著述であることから、当然おびただしい数の残酷なシーンが次々に登場し、グロテスクさとその量の多さは著者の小説作品に優るとも劣らず、読み手によっては読み続けることが苦痛になる可能性もある。そして、このような類をみない犯罪を犯した加害者たちの共通点としては、やはりというべきか、生育過程において彼ら自身が被害者であったことが指摘されている。とくに『羊たちの沈黙』のレクター博士のモデルとなったルーカスについては、その凄絶な半生に言葉を失う。また、いずれの章でも、犯行の特徴として多寡の違いはあっても、人肉食について触れられる点も通じている。

記録を重視したノンフィクションを期待される向きには合わないおそれも。以降は各章(殺人者たち)の概要。
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【1.人体標本を作る男/エドワード・ゲイン】
米。1957年に逮捕。自宅には"人体部品の山"が見つかる。多くは墓地から掘り起こしたもの。認められた殺人は二件で、本書内では最少。遺体の皮膚加工などが、映画『悪魔のいけにえ』等のモデルとされる。
【2.殺人狂のサンタクロース/アルバート・フィッシュ】
米。1934年に64歳で逮捕。幼い子供を次々に誘拐し殺害する。自供では400人とされる。親しみやすそうな老人にしか見えないため怪しまれなかった。
【3.厳戒棟の特別捜査官/ヘンリー・リー・ルーカス】
米。1983年に逮捕。『羊たちの沈黙』レクター博士のモデル。全米30州で米国史上最多の360の殺人を犯したとされる。本書では母による壮絶な虐待の様子や、犯罪組織との関わりが描かれている。
【4.ベトナム戦争は終わらない/アーサー・シャウクロス】
米。1989年逮捕。「ベトナムにいた一年が、俺にとっては最高に幸せな時期だった」。帰国後しばらくすると各種の犯罪に手を染め、逮捕・釈放の後に11人の連続殺人を犯す。
【5.赤い切り裂き魔/アンドレイ・チカチロ】
ソ連。1990年逮捕。少女を中心に53人の女性と少年を殺害。ソ連体制を原因とする捜査の不備もあって、捜査開始から逮捕までに7年以上を要する。その間、複数の冤罪逮捕者とそれを原因とする自殺者を生み出してしまう。
【6.少年を愛した殺人ピエロ/ジョン・ウェイン・ゲーシー】
米。1978年逮捕。ボランティアとして道化に扮する機会が多く、映画『IT』のモデルとされる。床下から多数の遺体が発見され、近隣にたびたび聞こえていた悲鳴は拷問に苦しむ少年たちの叫びだった。多重人格を主張。
【7.人肉を主食とした美青年/ジェフリー・ダーマー】
米。1991年逮捕。警察に助けを求めた男がきっかけとなり犯罪が露見する。強烈な異臭を放つ彼のアパートからは最終的に17体の遺体が押収された。部屋の食品はスナック菓子程度で、ダーマ―は人肉を主要な食料としていた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月15日
読了日 : 2020年10月15日
本棚登録日 : 2020年10月15日

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