『サカナとヤクザ』海の裏側:漁業とヤクザの秘密の関係
第1章:海の裏側
テレビディレクターとしての経験を持つ鈴木智彦氏は、漁業とヤクザの間の深い関係を探るため、北海道から九州、さらには香港や台湾に至るまで、広範囲にわたる「突撃取材」を敢行しました。彼の豊富な人脈を活かし、50以上の参考文献を基に、目の当たりにした事実を集約しています。この本の魅力は、その圧倒的な情報量にあります。
第2章:漁業の暗部
昔から漁業は天候に左右される産業であり、荒天時には漁師たちは時間を持て余すことになりました。そんな彼らが時間を潰す場所が「賭場」でした。賭け事による負債が漁師たちを追い込み、彼らは自らの資産を現金化することで債務を解決していました。漁業と裏社会の接点は、このような歴史的背景から生まれました。
第3章:法律と密漁のはざまで
漁業は法律によって定められた資格、期間、海域で行われます。しかし、密漁者たちはこれらの法律を破り、利益を追求します。密漁が行われる理由は単純明快、それは「儲かるから」です。密漁を主に行うのは、表世界の漁業関係者ではありません。
第4章:密漁のターゲット
密漁の対象となるのは、初期投資が少なく、高額で販売可能な魚群です。マグロのように大型船舶が必要なものは除外され、うにやナマコ、ホタテのような小規模で採取可能な海産物が主なターゲットとなります。
第5章:ナマコという名の黒い宝石
ナマコはその高価さから「黒い宝石」とも称されますが、国内では消費量が少ないため、市場は成立していません。しかし、中国をはじめとする海外市場では需要が高く、利益を求める事業会社によって採取・輸出されています。著者は、このナマコの世界で、表だけでなく裏の事業会社も存在する可能性をつきとめます。
結論:持続可能な未来への警鐘
私たちは安価な魚を享受していますが、その裏には禁漁期間を無視した市場が存在するかもしれません。鈴木氏の本は、私たちに「普通ではないマーケット」が存在する可能性に気づき、持続可能な状態について考えるきっかけを与えてくれます。
- 感想投稿日 : 2024年3月24日
- 読了日 : 2024年3月24日
- 本棚登録日 : 2024年2月10日
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