夢見る帝国図書館

著者 :
  • 文藝春秋 (2019年5月15日発売)
3.74
  • (131)
  • (224)
  • (192)
  • (34)
  • (8)
本棚登録 : 2519
感想 : 288
5

『夢見る帝国図書館』
――――――――
【購読動機】
読者のみなさんのレビューと本の概要の紹介をきっかけに購読しました。
本は嫌いではありません。
「本好きな人向けの物語」とあれば、自然に手にとってみたくなる気持ちとなりました。
――――――――
【ものがたり】
女性作家Aと上野界隈に住む年配の女性Bの出会いから始まります。
BはAに対して「図書館の物語を書いて!」と願います。
その過程でBはAに対して、帝国図書館(現在の国立国会図書館)の歴史を紹介、説明します。
――――――――
【図書館の苦難の歴史】
いま、私たちの身近にある図書館。本と出会い、本と語らいあえる場所。
いたって普通な、日常生活の一部です。
この小説では、図書館が外国に倣い、設立・運営されるも、その苦難な歴史が描かれています。
・戦時中
予算不足により計画通りに図書館建造物が竣工できなかったこと。
 予算不足により蔵書を調達することができなかったこと。
 戦禍の影響により、図書館内の蔵書を疎開せざるをえなかったこと。

当時の帝国図書館の設立、運営に携わった多くの方のおかげで、今日の図書館につながっているのだと理解することができます。
――――――――
【タイトルの「夢見る帝国図書館」】
帝国図書館を主語にすれば、帝国図書館が戦時・戦後とどのように生きて、何を夢見ようとしていたのか?小説から推察できます。それは、図書館として、安全に安心して、その時代を生きる人々に「書」という世界を提供すること。

また、帝国図書館を目的語にしたならば、主語は誰かであって、その該当者が帝国図書館を夢に見るととらえることもできます。
戦時・戦後当時は、現代社会と相違して多くの書物を自由に探索し、出会える環境ではありません。学をもっともっと志したたかった人々は、ひょっとしたら、帝国図書館でより多くの時間を過ごし、物事に対してより広く思慮したかったのかもしれません。
――――――――
【読み終えて】
図書館を舞台にした物語は、初めてでした。
図書館の片隅で、または図書館の近くの喫茶店で、図書館を見やりながら読んでみるのも、趣の一つとなるかもしれません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年5月27日
読了日 : 2023年5月27日
本棚登録日 : 2020年5月22日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする