TOKYO FMの「ミッドナイト・オデッセイ」として放送されたものを小説にまとめた短篇集。
たった2ページにおさめられた、旅のおはなし。
風に凪ぐ、湖の水面も見ているような感覚に心が陥る。
ずっと、手元に置いておきたい本。
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「イグアノドンからの伝言」
ロンドンのクロムウェル・ロード。
イギリスの誇る自然史博物館に飾られている、恐竜の骨格標本は、時々お喋りをする。
そんな噂を聞いたのは去年の春でした。
イギリスから帰国して友人がもっともらしい顔で話して聞かせてくれたのです。
「イグアノドンの骨格標本だよ。その前に立って、しばらくじっと息を殺していると、恐竜が話しかけてくるんだ」
友人は、そんなことを言いました。
私はもちろん半信半疑でしたが、今年の秋、ちょうどロンドンへ行く用事があったので、自然史博物館を訪れてみました。
友人の言っていたイグアノドンの骨格標本はすぐに見つかりましたが、その前に立ってじっと息を殺してみても、なんの物音も聞こえませんでした。
私はがっかりして、ホテルへ帰りました。
部屋へ入ると、メッセージランプが点滅していたので、私はさっそくフロントへ電話をしてみました。すると、フロントのマネージャーハこんなことを言いました。
「伝言が入っています。風邪をひいて、のどの調子が悪いので、先ほどは失礼しました。という内容です。」
誰からの伝言ですかと私が尋ねると、マネージャーは相手の名前を読み上げました。
「イグアノドン、という方からの伝言です」
- 感想投稿日 : 2010年11月8日
- 読了日 : 2010年10月31日
- 本棚登録日 : 2010年10月28日
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