教養としての認知科学

著者 :
  • 東京大学出版会 (2016年1月23日発売)
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本棚登録 : 614
感想 : 20
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「教養としての」という枕詞がついた本は、大体、難しい内容をわかりやすく噛み砕いてくれた本が多いと思っているが、本書はなかなか、そうはいきません。
私なりの解釈を言えば、本書は、人間がハマってしまう「思い込み」についての本だという風にざっくり理解しています。しかし、それなりに難解。
「アハ体験」という、静止画を注意深く観察していても気が付かない、画の変化に気がついた時に愕然とするあの感覚の理屈を科学的に説明してくれる本とでも言うのか。
(実際、上記の事象を「チェンジブラインドネス」として本書でも紹介され、You Tubeで検索すれば沢山ヒットする)

知的好奇心を刺激される、様々な人の認知に関するエピソードが紹介されています。
人間の脳は、超・高性能だけれど、それでも人間は馬鹿な判断をしてしてしまうということが、多くの実例、実験結果で証明されていきます。
「自分だけは、正常に判断できている」というふうに感じている人が多いかもしれませんが、それこそ大きな誤解で、IQの高さとは別の次元で、人間は自分の脳に騙されます。

認知、思考、記憶なんかの、脳みその、知っていそうで知らなかった能力とその限界を、かなりアカデミックに説明してくれてます。
それはそれで面白いのですが、説明内容はなかなかに高度な理解力が必要と思われます。
それは、筆者もよく自覚していて、安易にわかりやすさに走るのではなく、長くなってしまっても正確に伝えようという真摯な姿勢の裏返しだとのことです。

ということで、ある程度の難解さはありつつ、認知という世界の入り口にして、幅広いテーマでの解説を網羅的に説明してくれる本書はおすすめです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経営と教養
感想投稿日 : 2023年9月25日
読了日 : 2023年9月4日
本棚登録日 : 2023年9月4日

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