素敵な日本人 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社 (2020年4月14日発売)
3.57
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本棚登録 : 3638
感想 : 215
4

東野圭吾さんの9編からなる短編集。
心温まるお話から本格ミステリー、高度なSFまで様々な作品を楽しめる作品だと思った。
それぞれの感想を載せていきます。
《正月の決意》
個々に出てくる人間達が、あまりにもふてぶてしくて少し引いてしまったが、その結果メインの夫婦の自殺を止める事になるというラストがとても面白かった。人生はもっとふてぶてしく、金言だなぁ。

《十年目のバレンタインデー》
一組の男女のバレンタインデーでの食事会がメイン。
男の罪が暴かれ行くところがとても面白かった。最初は女性を疑っていたため正体がわかってとても満足でした。

《今夜は一人で雛祭り》
父親が嫁入り前の娘を大丈夫なのかという不安を描いたお話。一見関係なさそうに見える結婚前夜の話と雛祭りのエピソードが絡んでおり、真相知った際には彼女がなぜ不安にならなかったのかの理由も明らかとなる、この母親にしてこの娘、とても強かなんだろうなと思いました。

《君の瞳に乾杯》
ある男女の出会いを描いたエピソード。
出会いからその結末までの話だが、2人の関係性が現代的でいいなぁと思いました。結末は《十年目のバレンタインデー》と似たようなものだが最後の男の言葉が切なく、もしかしたら彼女に対して本当に淡い気持ちを抱いていたのかなぁと思いました。

《レンタルベビー》
ここでまさかのSF展開。
ロボット赤ちゃんを育てるカップルの物語だが、発熱や謎の失踪事件まで起きて不穏な展開まで起こっていく。その謎はなんとなく想像はついていたが、その後の2つのどんでん返しにびっくりしてしまった。挑戦って大事だなぁ。

《壊れた時計》
ミステリーである事を逆利用した回。
壊れていることが逆に怪しいからと、直しに行ったらそれが裏目に出てしまったという話。Aの忠告を聞いていれば犯行は隠せたのかもしれないけど、突発的な犯行だったから結局捕まっていたのかなぁと思いました。

《サファイアの奇跡》
女の子ととある猫の出会いを描いた物語。
猫が事故死してしまった所がとても悲しい気分になったが、脳移植によって別の猫の中にイナリが生きていることがとても嬉しくなった。

《クリスマスミステリ》
怖っ!!
あのとき自分が殺したはずの人が生きており、その後で本当にその人が亡くなってしまった。しかも自分が殺そうとしたときの状況と同じという所が、彼女の本気度を表わしていてとても怖いと思いました。

《水晶の数珠》
最後に感動ストーリー。
夢を追い続ける男とそれを反対する父親との物語。タイムスリップというSF感のある話を親子の不器用な関係を軸に展開されるストーリーに混ぜて感動させるところが素晴らしかった。不器用ながらも父親は彼のことを応援していたんだなぁ。

これだけ幅広い話を書ける東野圭吾さんこそが「素敵な日本人」なのかなと思いました。素晴らしいお話をありがとうございました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー小説
感想投稿日 : 2022年8月6日
読了日 : 2022年8月6日
本棚登録日 : 2020年8月25日

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