在日

著者 :
  • 講談社 (2004年3月24日発売)
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感想 : 43
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最近作の「母」を先に読んだ これは文字のかけない母親とのたくさんの会話を元につづられた自伝で 在日という境遇がよく理解できた 
この「在日」ではさらに深く心のうちを書いている 
紆余曲折を経てようやく今に至り 自分の生き方だけでなく「東北アジア」の将来について考えている 
 EUが出来たのだから 東北アジアでもいがみ合っている国が集まって同じテーブルで話し合える時代が来るはずだ その時 各国とのパイプ役として在日がはたす役割は大きい・・・と

わたしには東北アジアという意識はなかった 東北アジアに住んでいながらほとんどの日本人はアメリカ・ヨーロッパの方を向いているのではないか

 155p ・・・わたしは悶々とし、心の平衡を失いかけていた。信仰への目覚めというより、土門先生への尊敬の思いが、わたしを洗礼に導いたと言える。・・・・・わたしは、焦りと悲しみの中で自分を見失って、今の苦境がずっと未来永劫に続きそうな錯覚に陥っていたのだ。大切なことは、必ず時があるに違いないのだから、その為に準備をし、心の平穏を取り戻すことなのだ。そう思うと、いてついた心が少しずつ氷解していくようだった。


225p  ・・・・ これまで在日は、日本の境界の中でしか生きられないという閉塞した状況にあった。「在日」であって、「東北アジアに生きる」ということは、決して断絶ではない。国や地域を越えて輪のようにつながっている、そういう生き方が出来るのではないか。残された人生を、この東北アジアにつながって生きるということのために、それを阻んでいる要因をひとつひとつ克服していく作業に費やしていきたいと願っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自伝
感想投稿日 : 2010年12月25日
読了日 : 2010年12月25日
本棚登録日 : 2010年12月24日

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