少女は卒業しない (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2015年2月20日発売)
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本棚登録 : 4366
感想 : 300
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繊細で美しい表現をされるので驚いたなあ朝井リョウさん。あの頃の恋特有の、ゆっくりと過ぎる特別で大切な、愛おしい瞬間を体感させてもらえた。
◆エンドロールが始まる
たった30ページちょっとだけど、本当に美しかった。今まで読んだ恋愛物で一番好きかもしれない。
 「先生の、男のひとにしては細い左手の薬指の上を、春の光がつるりとすべって、とてもきれいだ。」
この一文で、既婚者であることを知らせるのすごい。明記せず、主人公の行動から少しずつその恋の真剣さと儚さとを伝えていく巧さ。
◆屋上は青
「恋心とか片思いとか、そういう甘い思いじゃない。もっともっと辛くて、苦くて、憧れて、憎くて、焦って、もう二度と味わいたくないような思いを、私は尚輝に対して何度も感じてきた。
幼馴染の2人の間のそれぞれの「不安」、30ページでよくここまで鮮やかに表現するなあ。
◆在校生代表
ザビエルがいい味出す。順位表の話がとっても好きだった
。生徒会室というこの恋愛を象徴する場所。あの頃のわたしにとっても特別だった生徒会室と文化祭を思い出したなあ。
◆寺田の足の甲はキャベツ
朝井さん若いだけあって、高校生たちのノリがとんでもなくリアルだから、後藤と寺田のふたりの空気感も等身大で伝わってくる。
「あたしたちは十八年も生きてしまった。離れたくないと喚くほど子供じゃない。だけど、まだ十八年しか生きていない。離れても愛を誓えるほど大人でもない。」
大人っていつからなのか分かんないけど、幼いときに描いていた大人像とは全然違くて、離れても愛を誓える人はほんの一握りだし、2人のように綺麗に別れを告げる決断はできないと思う。だからすごいよ十八歳。
「こっち向かないでいいよ、寺田。」切ないなあ。
◆四拍子をもう一度
氷川さんと神田さんかわいいなあ。森崎くんファン心理をそそるなあ。
◆ふたりの背景
優しい二人が紡ぐ丁寧なことばが沁みる。細かい描写で口数の少ない正道くんのやさしさを伝えるの上手。よく喋る里香との対比が顕著だった。わたしはあすかみたいに芯のあって強い女の子にはなれなくて、真紀子みたいに本心隠して里香みたいな求心力のある人に引き寄せられたまま、あすかみたいな子に憧れて生きてきたから、真紀子の気持ちがわかる。だからあすかが、真紀子が正道くんに「そのままでいいと思う。」と言ったことを知って、彼女のこと知ろうとすればよかったって思ったのが嬉しかった。
尊い世界だ。
◆夜明けの中心
かなしくてかなしくて言葉に出来なかった。
大切な人を失う哀しみを知るには高校生は早すぎる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年4月25日
読了日 : 2023年11月16日
本棚登録日 : 2021年4月25日

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コメント 1件

もえぴさんのコメント
2023/03/13

わ〜〜めちゃくちゃこの感想好きです!!!!
私もこの作品を愛してやまないので、同じ温度で好きでいる人がいることが分かったのがすごく嬉しいです☺️
ちなみに私は、「在校生代表」が一番のお気に入りです。送辞で告白するって、、!

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