動的平衡2 生命は自由になれるのか

著者 :
  • 木楽舎 (2011年12月10日発売)
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 本屋で動的平衡3が出ているのを見かけたので、まずは読んでいない2を読んでみた。これは2と呼んでいいのか正直微妙なところで、1作目の圧倒的な完成度と比較すると寄せ集め感が強かった。一部は媒体の原稿を集めて編集したものなので仕方ないのだけど、逆に1作目の凄さを際立たせる結果になっていた。
 ただ一つ一つの原稿は当然ハズレなし。著者の作品を読むのは4冊目だが、サイエンティストかつエッセイストとして右に出るものはいない。身近な生命の現象をこれだけ豊かに描くことができるのは圧倒的な読書量と頭脳の明晰さによることを本作でも例に漏れず思い知らされた。個人的にはエントロピーをめぐる議論が興味深かった。物事は自然と発散の方向へ向かうようになっているが、生命はそれを見越して自らを破壊・再構築を繰り返し動的平衡を維持、エントロピーの影響を逃がしている。ここからもう一歩踏み込んで「水を飲むことでエントロピーを捨てている」という話になるあたりが他のサイエンティストと違うところだと思う。あとは遺伝子上に発生するミスとしてのガンを考察しながら、どうしてミスが起こるような設計になっているかの話も興味深かった。ミスが発生する、つまりそこに進化の可能性を残しているということらしい。そこに遊びがないと皆共倒れになるというのは人生の教訓のよう。自分とは縁遠い生物の世界をアナロジーとして捉える面白さもあるのでジャンルにとらわれず色んな本を読みたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年3月4日
読了日 : 2023年3月4日
本棚登録日 : 2023年3月4日

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