本屋、はじめました: 新刊書店Title開業の記録

著者 :
  • 苦楽堂 (2017年1月24日発売)
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感想 : 57

 本が好きなら「本屋を商いながら暮らしたい」と一度は夢想すると思う。では実際問題、本屋を始めて商売することはどういったものなのか?を知れる一冊でとても興味深かった。そして現実はそこまで甘くないこともよく分かる超プラクティカルな内容であった。
 著者は荻窪でTitleという新刊書店を経営しており、これまでの経歴と開業までの流れを追ったドキュメンタリーとなっている。もともとリブロで働かれていたらしく、土地を転々としながらさまざまな形で本屋の販売、経営にコミットされていたことがよく分かる。そして著者が考える本の尊さを開業過程、実際の営業状況から感じ取ることができた。
 池袋のリブロはジュンク堂と合わせてよく利用していたし同じ関西出身なので勝手に親近感を持った。2017年の刊行当時よりも本屋の数はさらに減っていく傾向にある一方、個人による独立系書店は増加している。それはまさしく本著のようにどういった流れで商売しているか情報を提供するケースが増えたからだと思う。(なんと事業計画書、営業成績表まで開示されている!)ノウハウの一部だから開示したくないはずだけど、そこを乗り越えてオープンソースにしたのは本というカルチャーに対する危機感からなのかなと思った。
 みんなが必要なもの、欲しいものを同じように並べていてもしょうがないという話は本屋に限らずネット通販の普及によって全ての小売りにとって共通課題となった。そこでお店を続けていくためにさまざまな仕掛けを用意することの必要性を説かれていた。ずっと同じスタイルで継続しているお店の尊さと合わせて。インスタなどのSNSにおいて雰囲気でインプレッションを稼ぐことよりもこういう実店舗における「リアル」の積み重ねこそが本当の意味でのカルチャーへの愛、貢献だよなと感じた。最後に京都にある誠光社の堀部氏との対談が載っていて、そこでは本屋の商売の厳しさ、意志だけではなんともならないことがよく分かった。一消費者として本を買うことを続けていきたいと改めて思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月1日
読了日 : 2023年12月1日
本棚登録日 : 2023年12月1日

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