ニシノユキヒコが主人公(?)ながら、ニシノユキヒコの心情は一切記されておらず、ニシノと交流したさまざまな女性たちの視点で、ニシノが語られます。
1番最後に配された「水銀体温計」で、ニシノの少し屈折した女性への態度の背景が明かされ、その一つ前の章「ぶどう」で、唐突に訪れた彼の冒険の終わりが綴られます。姉への気持ちを明確にするのが怖かった、ということなのでしょうか?ただ、思えば、1番最初の「パフェー」で成仏しきれず他の女の元へ行くあたり、もうその浮ついた性分はもう自制の効く類のものではなく、生まれついた性質なのでしょうか。
ニシノと女の儚い関係の中の穏やかな熱情に、なんだかやつされるような想いがしました。愛って少しドロドロとしていて暑苦しいけれど、恋はサラサラ、キラキラしていて、ひだまりのようです。愛するって、きっと一定程度は能動的なものなんですよね。ニシノは、そのドロドロが怖くて、心の全部を相手に委ねないように、愛さなかったのかなと思います。
愛したいのに、愛せない、その絶望と孤独がわかるが故に、ニシノが可哀想で可哀想で、ドキドキしてしまいました。その可哀想が、多くの女を虜にするのでしょうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2022年2月20日
- 読了日 : 2022年2月20日
- 本棚登録日 : 2020年1月3日
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