パチンコ 下

  • 文藝春秋 (2020年7月30日発売)
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感想 : 153
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この構想を30年間も温めていたとは。
四代記は統治時代という難しい時期から始まる。

韓国ドラマみたいというレビューを見かけたけど人物設定やストーリーラインが波乱万丈という点では頷ける。聖人を体現化したようなイサクに反してハンスは女の敵を絵に描いたようだと思ったけど、ここまで抜け目がないと一周まわって潔く見えてしまう笑

それから大阪の地名といい、細部まで丹念に研究されていたことがよく伝わってきた。会話に関しては日本人の発言にしては攻めたことを言うな、と思うこともあったけど。あとこれは翻訳された池田さんの手腕だけど会話の関西弁も思ったよりナチュラルだった!(東京都ご出身というのがまた意外)

全然言える立場じゃないけれど、それでも上巻は只々申し訳なくて心苦しかった。命があっても不憫でしかないのか。
下巻では戦後活気が戻る一方で、少しでも理想の生き方に近づこうと皆が死にものぐるいで手を伸ばす。暗澹たる上巻から解放されたと手放しで喜ぶわけにもいかない。これ以上誰もいなくならないでと終始願っていた。

「なあ、人生ってやつには振り回されるばっかりやけど、それでもゲームからは降りられへんのや」

タイトルの意味はわりとすぐに分かってくる。
パチンコをはじめとしたギャンブルには手をつけたことがないし、読了したからと言ってそれがプラスイメージに変わることは正直なところない。

でもこうしてこの四代記を追っていると、生きるって行為は一か八かなんだというのがひしひしと伝わってくる。そうであっても、この先どう転がったとしても、その動きが他の誰かに操作されたものであって欲しくない。

今はそう信じていたい、というか信じている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年11月15日
読了日 : 2021年11月15日
本棚登録日 : 2021年11月15日

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