お伽草紙 (新潮文庫)

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 夏だ!太宰を読もう!と、思い立った私。周りの文学クラスタに「一番好きな太宰治の小説」を尋ねたところ、『お伽草子』を挙げた人が一番多かったです。『人間失格』や『桜桃』『津軽』なんかが人気あるのかな、と思っていたので少し意外でした。
 この新潮文庫版では、「お伽草子」の、全四話と前書きに加え、井原西鶴から材をとった「新釈諸国噺」や、中国の古典に着想を得た「竹青」「清貧譚」、盲目の三味線奏者の日記に着想を得た「盲人独笑」を収録。 
 どれも面白かった!日本のあらゆる作家の中で、太宰治は最高のユーモアセンスを持っていると思いました。なん箇所か、クスクス笑っちゃった。そのユーモアが、ちょっと悲哀があって、やさしくて、いいんです!
 お伽草子は、「瘤取り」「カチカチ山」「舌切り雀」「浦島」と、日本人なら誰もが知っているおとぎ話を下敷きにしています。その人間描写が、ユーモアに満ちててすばらしい。瘤取り爺さんにでてくるおばあさんやら、カチカチ山の残酷な処女ウサギと、愚かな狸やら。いとしくなること間違いなし。
 お伽草子に比べて、「新釈諸国噺」は知名度が低い気がするけれど、これはかなりおもしろかったです。私は西鶴を読んだことがないので、太宰がどこまで物語を創作したのかわからないけれど、西鶴と太宰のコラボ、これは最強だ。残酷さ、滑稽さ、人情。短い話にまるっとはいってます。読みながら日本全国を旅行できるのもイイ!笑
 「盲人独笑」は、半分ホンモノ、半分太宰の創作、というのが私には仇に働いて、あまり楽しみきれませんでした。本物の日記を読みたくなってしまって、集中できなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2012年7月18日
読了日 : 2012年7月17日
本棚登録日 : 2012年7月14日

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