僕が死んだあの森

  • 文藝春秋 (2021年5月26日発売)
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感想 : 65
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図書室で見つけたら必ず借りると決めているルメートル。不穏な題名の通り、書き出しからいきなり6歳の子の行方不明事件が出て来るのですが、その事件がなぜ起きたかというとある犬が車に轢かれたことがそもそもの始まりであり、変わり者の母親のことを理解しているけれど不幸である12歳の少年が家庭で得られない親密さや安らぎを感じ大事に想っていたよその飼い犬が死んでしまって絶望したからである、ということを、神のような絶対的な視点から淡々と冷徹な筆致で書いてくれて、いきなりグイグイ引き込まれました。自分が12歳で父親とは離れて暮らしていて母親のことはある意味諦めていて、学校の子達とのつきあいも微妙で、でも子供だからこの町から出られないという辛い状況に置かれているかのような気持ちになりながら読みました。あまり分厚い本ではなく、事件が起きた年の数日間と12年後、そしてその数年後という構成になっていて、途中で死んだりはしなさそうという安心感はありつつもずっと不安な気持ちのまま、という、下にネットはあるけどずっと綱渡りをしているみたいな読書体験でした。これどうやって終わるのかしら、と不思議に思っていたら、まるでホグワーツのセブルス・スネイプ先生のような展開でビックリ。でも驚いたのは一瞬だけで、思い返してみればなるほどね、、、と至極納得。やはりこの作家さんはすごいです。訳者あとがきも読みごたえあり良かったです。今後も読めるだけ読みたい作家さんです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サスペンス
感想投稿日 : 2022年1月24日
読了日 : 2022年1月22日
本棚登録日 : 2022年1月22日

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