こんな本のタイトルだと、若い恋人たちが二人だけの世界へ逃げていくように思うのだが、この作品は、恋人ならぬ、一匹の犬と中年主婦が世間から逃げだす話だった。
隣の家の子供にいたずらされて、その子に跳びかかり、殺してしまったゴールデンレトリバーの「ポポ」。事件の原因は子供がいたずらをしてきたことにあるのだが、その子は死んでしまっている。当然のことながら、世間の目は「子殺しの犬」には冷たくなる。保健所へ渡すか、犬を処罰するか。
ポポを我が子のようにかわいがる主婦妙子は、どうしてもポポを手離せなかった。
子供たちも成長し、心が通わなくなっていた家族と話し合ってもらちがあかない。妙子の寂しさを癒してくれるポポとどうして別れることができるだだろうか。一大決心をした妙子は、真夜中に犬を連れて夫名義の預金通帳と印鑑を持ち家出をする。季節は11月の終わり。夜は冷え込んでくる。犬連れでは電車にも乗れず、寒さに震えながら走っていると、運よく荷物を運送するトラックに乗せてもらえた。テレビなどでもニュースは放映されていたため、おたずね者の「犬」はすぐにわかるが、それでも心あるドライバーたちのおかげで、妙子とポポは、東京と神奈川の県境から兵庫まで行くことができた。
しつこいマスコミの追跡や田舎の人々の興味津津の眼にさらされながらも、一人と一匹は、誰も来たがらない関西の山奥の家を借りることができた。自給自足をしながら、ひっそりと暮らし始めたのだが・・・。
ペットロスという言葉もあるが、この作品にはペットについての問題点が多く書かれていた。
ペットショップで売れ残る成長した子犬たち。大型犬の扱いになれずにいたすらをしかける悪がき。
ペットとして扱われる犬たちの背景には、自分に都合のいいように犬の一生を支配しようとする人間の姿が見え隠れする。
命がけで飼い犬を守ろうとした妙子は、世間一般の目からみれば、「なんという飼い主だ。飼い主が悪い」ということになるのだろう。
人間中心の社会では、犬の忠義心も道徳心も通らない。
ペット問題も難しいなと思った。
- 感想投稿日 : 2014年2月3日
- 読了日 : 2014年2月3日
- 本棚登録日 : 2014年2月3日
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