一日の終わりに人一倍疲れを感じてしまう彼は、時々ベッドの中で私の頭を抱き寄せ「すまない」と言った。疲れすぎていて、どうしても肌を合わせることができそうにない、という意味だった。
何故あやまるのかわからなかった。交合はしなければならないからするのではない、したいからするものだった。ましてそれが愛情の証であると信じるほどわたしたちは若くはなかった。それに第一、交合は官能の象徴ではない。いわばそれは、官能への入口のちょっとした扉のようなものでしかない、と私は考えていたのだが、そうしたことを彼に説明するのはなんだか億劫だった。(本書P456)
そして、三島由紀夫「天人五衰」をオマージュしたラストの華麗さを味わってください。
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- 感想投稿日 : 2023年7月16日
- 読了日 : 2023年7月16日
- 本棚登録日 : 2023年7月16日
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