欲望 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2000年3月29日発売)
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感想 : 96
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一日の終わりに人一倍疲れを感じてしまう彼は、時々ベッドの中で私の頭を抱き寄せ「すまない」と言った。疲れすぎていて、どうしても肌を合わせることができそうにない、という意味だった。
何故あやまるのかわからなかった。交合はしなければならないからするのではない、したいからするものだった。ましてそれが愛情の証であると信じるほどわたしたちは若くはなかった。それに第一、交合は官能の象徴ではない。いわばそれは、官能への入口のちょっとした扉のようなものでしかない、と私は考えていたのだが、そうしたことを彼に説明するのはなんだか億劫だった。(本書P456)

そして、三島由紀夫「天人五衰」をオマージュしたラストの華麗さを味わってください。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年7月16日
読了日 : 2023年7月16日
本棚登録日 : 2023年7月16日

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