一人のジャーナリストがこれだけ真実に迫れるのに、調査権を持ち人材も多い警察が間違った結論に到達したり、何も解決できなかったり・・この差は一体どこからくるのか?
本書で感じたのは、失点を恐れる警察組織の問題、ベテラン刑事の勘頼みの思い込み、証言や聞き込みなどの細かな事実の上での事件全体の構図を見直すという謙虚でかつ基本的な行動ができていないという結論に至ります。
それにしても、桶川ストーカー事件での埼玉県上尾警察署の酷さは恐ろしいくらいです。
被害者からのストーカー行為の告訴を無視したあげく、書類の改ざん、マスコミへの情報操作など目に余りますが、今でもYouTubeで見られる刑事2課長の笑いながらの記者会見、これは助けを求めていた女性を守れず自分たちの失態で殺された状況を考えれば、さらし首の刑でしょう。
さらに、著者の清水さんは、足利事件の冤罪で菅谷氏の釈放にも主導的な役割を果たしており、独自の地道な捜査で真犯人にもたどり着いていたのですが、逮捕の方は時効の壁に阻まれました。(その真犯人も警察はノーマークだったというのですから驚きです)
そんなこともあって、彼や協力者たちの尽力で2010年に死刑判決相当の事件では時効が撤廃されることになりました。
さらに、北海道図書館職員が行方不明になったのを、事件性がないという警察に、状況から違和感を感じた清水氏が調査をした結果、殺人事件だとわかった・・など清水氏の調査能力は警察署員が束に立ってもかなわないという活躍ぶりですが、これは逆に言えば、警察上層部に清水氏のような事件の青写真を描ける人物が存在しないために、潤沢な人手を勘違いの方向に振り向けて時間と労力だけを食いつぶして、結局は事件が解決しないという流れではないかと想像します。
つまり、現場の指揮官、おそらく課長クラスの人事に問題があるという風にも考えられます。
一言で言えば、住民のためになっていない警察組織の弊害こそが諸悪の根源で、ここにメスを入れない限り、上層部を見ながら仕事するだけの使えない警察官が跋扈し続けることでしょう。
- 感想投稿日 : 2018年11月22日
- 読了日 : 2018年11月28日
- 本棚登録日 : 2018年11月22日
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