厄介で、どうしようもなく人間。
コウちゃん…
なんてコウちゃんは人間らしかったのか。むしろ、コウちゃんが人間らしくあってくれて嬉しかった。
「マディ」の指輪の話、ハイツオブオズのケーキの話、コーキの天使ちゃんの話、図書館の話、プラズマテレビの話、そして「お久しぶりです」のわけ。
最終章で怒涛の伏線回収。それもただスッキリするだけでない、胸を熱くさせる伏線回収。気持ちが良すぎる。ページを繰る程に幸せだった。
コウちゃんは友人のことをを呼び捨てる。しかし敬語で接する。
「どうしたんですか、環」というように。
最初、この喋り方に自分は違和感を覚えた。ロボットのようだなとも思った。なんか「人間ぽくないな」と。
でも違った。どうしようもなく彼は人間だった。スロウハイツの住人のように、むしろそれ以上に。
だから今思うのは、チヨダ・コーキという殻に隠れる千代田公輝があまりにも魅力的であるということ。
ただ、その魅力はコウちゃんに限ったことではない。キャラクター全員が抱える“苦楽”がそれぞれの個性−人間らしさをありありと表現している。
だから、その人間らしさの持つ温もりや愛で満たされ、幸せな気持ちになれたのだろう。
人間っていいな。嫌になっちゃうほど厄介で、とてもあったかい。人間っていいな。そう思えた一冊。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2020年11月4日
- 読了日 : 2020年11月4日
- 本棚登録日 : 2020年5月5日
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