蔓の端々 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2003年4月15日発売)
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本棚登録 : 86
感想 : 8
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藩内のお家騒動に巻き込まれ翻弄される下級武士たちの哀しさと、主人公のしなやかさや成長を描いた物語です。
乙川作品、やっぱりハズレなし!すばらしいです。

今回は主人公の養父、仁右衛門の言葉にずっしりきました。
小説なのにフセン貼りまくり。少しだけご紹介します。。

「明日のことを考えられなくなったら人間は仕舞いだ、いかに財を成そうがそうでなかろうが、明日のことを考えぬ人間は惨めだ、若いころは十年、二十年さきまで考えたものだが、歳をとるにつれて五年さき一年さきとなり、そしてとうとう明目のことすら考えられなくなってしまった」

「人はどう生きようと最後には後悔するようにできているのかも知れん、しかし生きている間は明日を見て暮らすほうがいい、不幸や憎しみを忘れるのはむつかしいが、忘れなければ立ち淀むばかりだろう」「しかし、よしんば忘れたとしても再び思い出さぬとは限りません」 「そういうこともあるだろう、だが一度忘れておけば次は軽くなる」

「腹の見えぬ人間を頼るよりは自然に出会った人を大切にすることだ、人が一生の間に出会える人間は限られている、その中には縁がなく去っていくものもいれば死別するものもいる、結果、残るのはわずかな人数だが、それが利勘のからまぬ人たちだろう、それでよいのではないか」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2012年8月24日
読了日 : 2011年5月31日
本棚登録日 : 2012年8月24日

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