それから (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1985年9月15日発売)
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本棚登録 : 5788
感想 : 412
5

夏目漱石、第三段です。
この作品は恥ずかしながらまったく予備知識がなかったのですが・・・こんなにときめく小説だったとは!びっくりしました。

むせ返るような百合の香り、降りしきる雨、そんな雰囲気の中、代助が三千代に一大決心をして思いを打ち明ける。
遅すぎる告白に三千代が「あんまりだわ」と泣いている情景が目に浮かび、この美しすぎるシーンに胸が高鳴りました!
この慎ましやかな感じ、裏腹に内に秘める情熱が日本的で本当にステキなのです。

(少ないですが)夏目漱石の作品の中で一番好きになりました。
私ってこんなにロマンチックだったっけ?と思うほど感銘を受けてしまった(笑)

まあこの作品は恋愛小説の側面もありますが、その他にも、格差の問題など当時の世相にも触れバッサリ。そのあたりも楽しめました。
例えば。
「平岡の家はこの数十年来の物価高騰に伴って中流社会が次第々々に切り詰められていく有様を、住宅の上に善く代表した、尤も粗悪な見苦しき構えであった。
~東京市の貧弱なる膨張に付け込んで、最低度の資本家が、なけなしの元手を小売りに廻そうと目論んで、あたじけなくこしらえ上げた生存競争の記念であった。」
などど鋭く切り込む感じが面白い。

また、代助のニートぶりにも閉口しますが、それも当時では珍しくないんですよね。
高等遊民も分かった気分♪
理想と現実のバランスをとること、人間のプライドの奥深さ、など、いろいろと考えさせるポイントがあり、そういう意味でも素晴らしい作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恋愛
感想投稿日 : 2016年12月12日
読了日 : 2016年12月12日
本棚登録日 : 2016年12月12日

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