モーパッサン短編集(一) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1971年1月19日発売)
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本棚登録 : 279
感想 : 18
5

悲しい とか 
嬉しい とか 
苦しい などのように

”一言では説明できない心情”
が 炙り出されているから

こんなにも  
惹かれるのかもしれません。

「あいつさえいてくれればなあ~!」
貧しい一家の希望の星である叔父との
あまりにも思いがけない再会を描いた
『ジュール叔父』。

たった一度だけ出席したパーティ。
裕福な友達から借りた真珠の首飾りを
失くしてしまった妻のその後の人生。
衝撃のラストに思わず息を呑んだ
『首飾り』。

道に落ちていた紐を拾っただけの
吝嗇な男が
「財布を拾ってポケットに入れた」と
虚偽の告発を受け
ただただ 弁明に弁明を重ね
がんじがらめになっていく姿に
絶望を感じる
『紐』。

そして あるサロンのお茶会で
「恋の話」として語り手に披露される
『椅子直しの女』。

家族で村から村へと放浪しながら
椅子などを修理して生計を立てている
貧しい少女が 生涯をかけて貫いた
「恋の話」を読み終えた時

いじましいと思う人もいれば
みっともないと眉をしかめる人
救いようがないと胸を痛める人
様々だと思うのですが

恋というのは
何も美しく華やかな
男女だけが落ちるものではないのだーと

端的に言い表している
このタイトルの秀逸さ。

ほとんど全ての作品が
あっと驚くような
胸を打たれるような
印象的な結末であるにも関わらず

びっくりするほど
淡白な表現で
あっけなく幕を下ろします。

ただ
”一言では説明できない何か”を
読者の胸に残しつつー。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 翻訳
感想投稿日 : 2020年8月13日
読了日 : 2020年8月13日
本棚登録日 : 2020年8月13日

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