本書では冷戦後の世界の構造が、文明によって決定づけられるとし、そんな中で国々がとるべきスタンスを主に東アジアを舞台に論じている。
内容はまず、冷戦後の社会構造を文明、パワーバランスの観点から分析し、その上で文明的に孤立した日本がどのようなスタンスをとればいいのか提示している。次に、冷戦後、文明というひとつの尺度に対して未だに時代遅れな支配的な立場をとっているアメリカを批判し、新時代においてアメリカのとるべき立場を提示している。最後に過去の文明間の衝突の原因を踏まえて、東アジア、さらには世界にまたがるフォルトライン戦争を避けるにはどうすればいいのか論じている。
著者の文明という切り口は鋭く、文明という要素と過去の事実がつながっていく論旨の展開は読んでいて非常に面白い。
同時に他の「文明」という自分がどんなに理解に努めても理解できず、認めるしかない事実を再認識し、何か背筋に走るものを感じた。
しかし、この本を読んでいると文明というものはほぼ普遍的な事実としてとらえられているように思えるのだが、昨今情報の民主化、金融の民主化が整いつつある中で、この文明という枠組みがどれぐらい普遍性・支配力を持つのか、そして持っていくのかは論じる余地があると思う。
ただ、おそらく著者はそんなことはわかっていて、にも関わらず、あえて文明という切り口で切り込んだ覚悟は素晴らしいと思った。
読んでいて若干裏付けが足りない部分が多くも感じたので、文明の衝突も読んでみたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
政治
- 感想投稿日 : 2011年4月25日
- 読了日 : 2011年4月25日
- 本棚登録日 : 2011年4月25日
みんなの感想をみる