アリソン・アトリーの古典的名作。いわゆるタイムトラベルものに入るのだろうけれど、そこはイギリスのものらしく、そもそも過去を変えようとかそういう積極的な関わりではなくて、そこはかとないノスタルジーと喪失感が漂う。最後に、(生きては)もう二度と会えないと知りつつ見送るアンソニーとフランシスの騎馬の後ろ姿が何とも印象的。
人間の一生は短く、神の思し召しのまま、死んだらそれでおしまい。それでもなお、連綿と続いていく何かがあって、それは例えば丘や川であったり、家の横に立つ樹であったり、血のつながった人々の暮らしであったりする、という辺りのゆったりとした認識が、イギリス的だなあと思う。
話に絡んでくるのが、カトリックとプロテスタントが激しく争っていた16世紀のイギリスの情勢、実際に起こった幽閉のスコットランドのメアリー女王救出作戦(失敗)とそれに続くアンソニー・バビントンの処刑なので、日本の小学生だとちょっと読むのが大変かも。丁寧に描き込まれた生活の描写も、むしろ大人の方が楽しめるかもしれない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
図書館
- 感想投稿日 : 2018年12月4日
- 読了日 : 2010年10月25日
- 本棚登録日 : 2018年12月2日
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