私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2012年9月14日発売)
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感想 : 714
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著者の作品で読みたいと思うものが幾つもある中で初読みとなったのが本作(新書)でした。

「個人」から「分人」という考え方、これって凄い着眼点だと思います。

人は一人では生きていけない。

故に、多くの人とかかわることで生まれるのが対人関係での悩み。

これって凄く辛いことですよね。

「個人」って最小単位だと思っていましたが、「分人」という視点で考えれば多くの人が救われる気がします。

タイトル「私とは何か」って、やはり皆んなが考え、答えを見出せないもののように思います。

「本当の自分」って?

まだ活字にして答えることなんて出来ませんが、本書にて新たな視点を得ることが出来ました。

そして「分人」という考え方は著者の「ドーン」(長編小説)で出てくることも知りました。

近いうちに気になっていた著者の作品を読んでみようと思いますが、本作は是非とも多くの方に手にして頂きたいと思える一冊。

《メモ》
 日本語の「個人」とは、英語のindividualの翻訳で、一般的に広まったのは明治になってからである。しばらくは「一個人」と訳されていた。
 individualはin+dividualという構成で、divide(分ける)という動詞に由来するdividualに、否定の接続後inがついた単語である。individualの語源は、直訳するなら「不可分」、つまり「(もうこれ以上)分けられない」という意味であり、それが今日の「個人」という意味になるのは、ようやく近代に入ってからのことだった。
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本書では以上のような問題を考えるために、「分人(dividual)」という新しい単位を導入する。否定の接続後inを取ってしまい、人間を「分けられる」存在と見なすのである。
 分人とは、対人関係ごとの様々な自分のことである。恋人との分人、両親との分人、職場での分人、趣味の仲間との分人、...それらは、必ずしも同じではない。
〜〜〜〜
 一人の人間は、複数の分人のネットワークであり、そこには「本当の自分」という中心はない。
 個人を整数の1とするなら、分人は、分数だとひとまずイメージしてもらいたい。

《ステキな言葉》
愛とは、相手の存在が、あなた自身を愛させてくれることだ。そして同時に、あなたの存在によって、相手が自らを愛させてくれることだ。


説明
内容紹介
嫌いな自分を肯定するには? 自分らしさはどう生まれるのか? 他者との距離をいかに取るか? 恋愛・職場・家族……人間関係に悩むすべての人へ。小説と格闘する中で生まれた、目からウロコの人間観!
内容(「BOOK」データベースより)
小説と格闘する中で生まれたまったく新しい人間観!嫌いな自分を肯定するには?自分らしさはどう生まれるのか?他者と自分の距離の取り方―。恋愛・職場・家族…人間関係に悩むすべての人へ。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
平野/啓一郎
1975年、愛知県生まれ。小説家。京都大学法学部卒。1999年、在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第一二〇回芥川賞を受賞。以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年6月20日
読了日 : 2021年6月20日
本棚登録日 : 2021年6月20日

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