図書室ものという事で評価が甘くはなってしまいますが、表紙やイラストの漫画っぽさに比べて、登場人物たちの痛々しさがかなりリアリティが有るので、読んでいてヒリヒリする感じがします。
これは自分自身がいじめに遭っていた高校時代に、図書室や本にどれだけ救われたかという実体験を伴っているからだと思います。
行き場所がない人を優しく受け止めてくれるんですよ、本という存在は。そして本のつどう図書室や図書館というのはその集大成です。是非居場所のない子供たちは図書室へ。
他のドリーミーな図書館ものと違って、本で何かが劇的に改善する事なんて無くて、とにかく一時避難場所としての図書室なのが本当にリアル。
連作の中でずっといじめられている姿が風景のように存在する、三崎さんの章が本当にきつかった。女王のように君臨するクラスメイトに、ふとしたきっかけで存在を全否定されて、お弁当を食べる場所も無く学校内をさまよう・・・。ああ、こういう子は世の中に無数にいるんだなあと思うと、人間って嫌だなと本当に思います。
いじめてもいい存在というのが自分の中にいる事が、どれだけ精神的に穢れているのか自分で気がつかないのが恐ろしい。精神的な殺人者だと思います。
とても良い本です。もっと読まれてもいい作品です。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年8月12日
- 読了日 : 2021年8月11日
- 本棚登録日 : 2021年8月11日
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