内容(「BOOK」データベースより)
「このままじゃおれたちはやばい、ラストに相当やばい場面が待っているかもしれない。おれたちというのは、床屋のまえだとおれ、それにもちろん津田さんの三人組のことだ。だけど厳密にやばいのはあんただよ。わからないか。夜汽車に乗って旅立つ時だよ」いきなり退職金を手渡された津田伸一にいよいよ決断の機会が訪れる―忽然と姿を消した家族、郵便局員の失踪、裏社会の蠢き、疑惑つきの大金…たった一日の交錯が多くのひとの人生を思わぬ方向へと導いてゆく。
どういう話なのかという説明を求められたら割と簡単に答えられます。でも話の入り組みかたと無駄とも思われる絢爛たる豪華な文章で全体像の把握にとても骨が折れますです。小説の中の現実の話と、メタフィクションが入り組み、混乱が深まっていき最終的にはミキサーでがーっと混ぜたように脳の至る所に気になる部分がこびりついて茫洋としました。これを理解して読める人はよっぽど頭がいいか勤勉な人なんだろうなあと思います。
主人公津田の情けない姿に共感できないという意見よく分かります。でも実は男はこういう奴と友達になれるもんで、自分勝手でいい方にどんどん流されて失敗していくのに、友達はいる奴って結構こういう男な気がします。モテる女に女は冷たい印象有りますが、モテる男に男は寛容です。でも本当にくずですね津田さんは。
焦点になるポイントに大量の偽札があります。この大金によって大騒動が起きるのかと思いきや意外とそうならないのが不思議でしたが、最後まで読むとなるほどと手を打ちました。叙述ミステリー否定派なので、こういう風に徐々に徐々にパーツを開示展開していく話は好きです。ストーリー自体はさほど難しいものではなく割とシンプルですが、普通つまびらかにされるであろう所が色々ほったらかしなのでそこが僕には粋に感じました。人々の過去の動きは全て津田の頭で作ったメタという設定なんでしょうね。よくこの小説を書けたと思います。素直にすごいです。普通頭こんがらがるでしょう。
- 感想投稿日 : 2018年2月16日
- 読了日 : 2018年2月15日
- 本棚登録日 : 2018年2月15日
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