『作家にとって、食とは何か?食と作品どのようなかかわりがあるのか?』その疑問に鋭く迫った異色の作家、文学論です。読むもここまで調べたなぁという作者のの執念に思わず脱帽してしまいました。
この本は『文人悪食』の続編になります。37人の文士・作家の食癖がこの本には取り上げられているんですけれど、「文人悪食」に取り上げられている作家たちにも負けず劣らず、一様に皆、個性的過ぎる食生活を送ってらっしゃったのですね。それにしても、古今東西の文献を調べ尽くして、それを一冊の本に纏め上げる。作者の執念めいた仕事に今回改めて読み直して、ただただ、脱帽するばかりでございました。
自分が気に入っているところは出世一途の人生を送りながらも酒癖が悪かったために寺男になってしまい、孤独と寂寥の中で破調の俳句を読み続けた尾崎放哉と、20代からアルコール中毒で、酒と旅に人生をささげた歌人、若山牧水に関するところや、伊藤左千夫の本業が牛乳を搾る農家だったので、丼飯に牛乳をかけて何倍もかきこんでいたところには『野菊の墓』とはまた違ったイメージの作者像が浮かび上がってきて、少し驚きました。
ハイライトは荒幡寒村の言うところの『監獄料理』でこの本を読む限りではどう考えてもまずそうな豚とジャガイモの煮つけを奥様に『お前も監獄に行って食べてくるとわかる』といって大目玉を食らった場面なんかは大笑いしつつも、作家という人種は業が深いものなんだなぁと思った次第でございました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2011年8月26日
- 読了日 : 2011年8月26日
- 本棚登録日 : 2011年8月25日
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