ユリウス・カエサルの暗殺が詳述される前半と、遺言状で後継者に指名されていたオクタヴィアヌスによる活動の幕開けが綴られる中盤。後半は、一時は共闘態勢にあったアントニウス追討の軌跡も描かれ、なかなか盛りだくさんな巻。
冒頭のカエサル暗殺と、その後の暗殺者たちの経緯を見ていると、つくづく「暗殺者たちは何をしたかったのか、ローマをどのようにしたかったのか」「カエサルを殺害することで、どのように世界が変わり、自分たちがどのように遇されるのか」が全く見えていなかったのだな、ということが分かる。
邪魔者を排除さえしてしまえば、世の中はきっとよくなる、という超短視眼的な考え方がいかに危険か、という良い教訓として読むこともできる。
後半では、クレオパトラと手を携えたことでローマに弓を引いた形になったアントニウスを、オクタヴィアヌスが追撃する様子が描写される。最終的には、率いていた元カエサル将校が次々とアントニウスを見捨て、離反していく様も描かれ、「ローマの君主としての正当性」がどのように示され、民衆や軍人がどのようにそれを判断したのか、というのが勝敗を決める大きな要因だったことが見て取れる。
政治の転換点としても、争いごとの戦略の示し方としても、面白い内容が含まれていて読み応えあり。この巻だけ抜き出して単独で読む人はいないと思うが、これまでの巻と比べても相当、楽しめる巻であることは間違いない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
歴史・宗教・民族
- 感想投稿日 : 2022年12月29日
- 読了日 : 2022年4月2日
- 本棚登録日 : 2022年12月29日
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