昭和45年に書かれた、三陸海岸を襲った過去の津波の記録である。2011年の悪夢の震災を鮮やかに思い出させるほど、状況は似ている。
明治29年、昭和8年、そして昭和35年に大津波が発生した。もちろんその前もあったのだが、著者は体験者に直接話を聞くことにこだわったため、ここまでしか遡れなかったようだ。
美しい村が一瞬にして海に飲まれ、人や家がさらわれていく。この本を読み終わると、「将来また津波があることが分かっているのだから、三陸海岸から数百メートルの平地にはもう家を建てるのを禁止したほうがいいのではないか」と思わされる。数十年の時が経つと、人々は教訓を忘れてしまうものだ。
チリで起こった地震による津波で、日本で死者が出るというのも恐ろしい話だ。のっこのっことやってきた、という表現がリアルで怖かった。
インターネットも無い時代に、よくこれだけ取材して調べたな、と感心する。おそらく著者は、なんとしてでも後世に伝えなくてはという使命感から書いたのではないだろうか。残念なことに、2011年の東北大震災では、過去の津波経験が生かされたとは言いがたい。著者は震災の前に亡くなっているが、あの状況を見たら嘆いたに違いない。改めて犠牲者の人たちにお悔やみを申し上げたい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年10月17日
- 読了日 : 2014年10月17日
- 本棚登録日 : 2014年10月17日
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