片想い

著者 :
  • 文藝春秋 (2001年3月28日発売)
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男と女は、メビウスの裏と表の関係にあると思っています。
ふつうの一枚の紙ならば、裏はどこまでいても裏だし、表は永久に表です。
両者が出会うことはない。
でもメビウスの帯ならば、表だと思って進んでいったら、いつの間にか裏に回っているということになる。
つまり両者は繋がっているんです。この世のすべての人は、このメビウスの帯の上にいる。完全な男はいないし、完全な女もいない。
またそれぞれの人が持つメビウスの帯は一本じゃない。ある部分は男性的だけど、別の部分は女性的というのが、普通の人間なんです。

男を黒い石、女を白い石とするだろ。美月はグレーの石なんだ。どちらの要素も持っている。しかも五十パーセントずつだ。
だけどどちらに含めることもできない。元々、すべての人間は完全な黒でも白でもない。黒から白に変わるグラデーションの中のどこかだ。
彼女はそのちょうど真ん中ということになる。

人間の脳というのは、たぶん不安定なんだと思うよ。その日の体調や周りの環境なんかで、そのグラデーションでの位置がふらふらとずれたりするんだと思う。
俺たちだって日によっては少し女側に寄ったりするんだ。だけど九十五パーセント黒が九十パーセントに変わったところで大した影響はない。
ところが五十パーセント黒が四十五パーセントになったら大違いだ。白のほうが十パーセントも多くなる。

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感想投稿日 : 2009年1月8日
本棚登録日 : 2009年1月8日

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