超名作★5 犯行前後の記憶がない死刑囚の運命は? 刑務官と前科のある青年の苦悩が胸に突き刺さる #13階段
犯行時の記憶が喪失していた死刑囚が、当時の記憶の一部を思い出した。それは階段を見た記憶だった。
一方、長らく公務に勤めていた刑務官と傷害致死で仮出所をしてきた青年は、死刑囚の冤罪を晴らすべく仕事を受ける。法務省では死刑執行の手続きがどんどん進み、執行の日が迫っていた…
はい、名作。
ミステリーとしても、エンタメとしても、社会派小説としても圧倒的に★5
面白い面白いと聞いてはいましたが、バチクソ面白いですね。
なにより死刑といった重い社会問題がテーマにも関わらず、エンターテイメント性がスゴイんですよ。ジェットコースターのようなストーリー展開で、ダレるような場面がまったくない、しかも読みやすい。
そのままテレビドラマにしても十分見ごたえのある強烈な作品でした。
本作さらに素晴らしいのは、人間とその真剣な情念が描けているところ。
死と隣り合わせの死刑囚の緊迫感、被害者家族の露骨な怒り、死刑に携わる人たちの葛藤、正義と不義、罪と罰に対する思い… ひとりひとりが本気でぶつかっている熱い感情が伝わってきました。
特に刑務官と前科のある青年の心の機微がマジで突き刺さるんです、何度も何度も応援しちゃいました。そして衝撃のラスト、わだかまっていた霧が晴れ、ミステリーとしての読後感もバッチシでした。
実は死刑制度、嫌いなんですよね。
てめーの家族が被害者になったらどうなんだと指摘されますが、それは別の話。あくまで制度の話です。
議論や賛否あるところなので、難しい問題とは思いますが、本作はズバリ切り込んでいくところが素晴らしい。被害者の叫び、死刑制度の現実、人が人を裁くということ… 我が国の制度にしっかり向き合って、自分自身の責任で考えていく必要がありますね。
名作と知りつつ、あえて温めていた本作、やっぱり超一流の社会派ミステリーでした。おすすめです!
- 感想投稿日 : 2022年7月4日
- 読了日 : 2022年7月3日
- 本棚登録日 : 2022年7月3日
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