【ミステリーレビュー200冊目】最高で最低の深い絆、闇夜を照らす悲しい太陽のひかり #白夜行
■白夜行を読むにあたって
今回再読3回目です。最初に読んだときは何の予備知識もなかったのですが、あまりの衝撃に、すぐにもう一回再読したのを覚えています。
東野圭吾先生は人の絆を描くのがとても上手な作家です。親子愛、男女愛、家族愛、友情、上司と部下など… ミステリーなので悲劇のつらい話は多いですが、最後には前向きになれる、そんなお話が多いです。
しかし本作は一切前向きにはなれません。圧倒的にダークな物語です。
それゆえ、東野圭吾先生の最高傑作という方も多い作品です。かくゆう私も本作が東野圭吾作品の中で断トツの第一位です。
※名作過ぎて今更ではありますが、構成などを語っていますので、若干のネタバレの可能性があります。未読の方はご注意ください。
■レビュー
冒頭で悲しい事件が起き、二人の少年少女が不幸に見舞われるところから始まる。その後19年の長きに渡って、二人の人生を読まされることになります。
それなりに生きづらい人生を歩んでいるんだな…と思って読んでいると、中盤あたりからどうも違和感を感じる。
この二人には何かある、でもどんな関係性なのかよくわからない。ただひとりひとりが、気丈に人生を歩んでいることは手に取るようにわかる。
雪穂が結婚したあたりから、明らかに二人がつながっているのがわかる。後ろ暗い関係性なのは間違いない… さらにその後、亮司はより残忍な犯罪に手を染めているようだ。
しかし、私にはわからない。
一体、なぜ二人はこんな人生を歩んでいるのか?
そう、なにより本作では、主人公の二人の場面、会話、心情描写すらも一切ない。周囲の人が様々な不幸に合い、つらい心情を吐露する描写が書かれるのみなのだ。
そして最後、19年間二人を追い続けた刑事が二人の深い絆を語っていく。
なんなんだ、この小説は…
明らかに深い深い愛情の物語なのに、こんなにも憂鬱で、人を落ち込ませる小説はあっただろうか。
二人の絆が深すぎるのだ。最高に最低な関係性。不幸によって成形された愛情であることが残念でならない。
しかし、ここまでやれたら「素晴らしい人生を生きた」といえるような気もするんだが…いや、決してそんなことはない。
■推しポイント
圧倒的に人です、人物の心情描写が天下一品。
・笹垣
後悔の念、二人を助けたいという気持ちが手に取るようにわかる。完全に呪われてしまった人物。涙なしでは見られないシーンが多数あります。
・典子
愛情と不安に揺さぶられながらも、芯が強くまっすぐに生きる女性。
・一成
怪物から逃れなければならないとう恐怖感、ありありと伝わってきます。
・亮司
一番ひどいことをやっているが、おそらく心は一番弱く、しかしながら一番努力している人物。悲しい。
・雪穂
最後の一行がすべてを語っています。
ちなみにドラマも大好きです。綾瀬はるか、山田孝之、武田鉄矢の芝居は必見ですね。ただ必ず先に原作を読むことをおすすめします。ドラマと小説ではアプローチが全く違う(真逆)ので。
本作は、死ぬまでには読んでほしい名作中の名作です。ぜひ未読の方は手に取ってみてください。
- 感想投稿日 : 2022年8月26日
- 読了日 : 2022年8月24日
- 本棚登録日 : 2022年8月24日
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