アフターデジタル2 UXと自由

著者 :
  • 日経BP (2020年7月23日発売)
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本棚登録 : 1994
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推薦していたので読んでみたが、結論から言うと中国のデジタル事情についてほとんど知識の無い高齢オッサン会社員向けに書いた業務用セミナーのまとめ、といった感。
デジタルの「アフター」についても、中国米国ITに投資しているひとだったら既知のことが多くて新しさは感じない。刊行が9カ月前なので読んだときには既に情報が古くなったこともあるのか。
アリババやテンセントなどはインサイダーが書いたものなど翻訳ものの良書があり比較にならないし、実態の理解が進む。
この手の日本向けコンサル本で感じるのが横文字と短縮形の多さに加えて実は曖昧模糊な「コンセプト」で雰囲気を出して煙に巻く手法で、聞き手が???なのは、まだあなたが理解できていない証拠ですとなる。「バリューチェーン」から「バリュージャーニー」へ変化すべきと提唱するが、それは「すべての接点を統合し顧客がずっと乗り続けて企業がずっと寄り添うという」、実は企業側のバラ色の目線でしかない。
ラッキンコーヒーが事例として挙げられていて、スターバックスと同じ業態なので、著者も散々コンサル業務で事例として紹介したのだろう。しかしこれは膨大な現金を燃焼させて事業拡張をして株価を吊り上げ、その間に売り抜けようというスキームで、創業グループ は同じ前科のある札付きであることは、上場前から現地の起業家やファンドマネージャーが指摘していた。結果アメリカで上場後、空売りヘッジファンドがのべ1500人という人員を投入して売上の大部分が粉飾であることをレポートして上場廃止になったが、札付き創業グループは売り抜け、結局大損こいたのはバラ色の未来を吹聴された一般の人である。
ちょっときつい書き方をしたのは日本のこの界隈は、本書でも見られるやたら横文字に変換した曖昧な雰囲気コンセプトを語ってそこで終わり、というのが多過ぎだから。結果セミナーやインフルエンサーの語る抽象論イベントがいちばん盛り上がって、その先が無い。本書も重要なマネタイズやキャッシュフローについて無さすぎで、やたら用語とコンセプトの周りをぐるぐる回るコンサル本に思え、ブームが去った後からみるとなんたコリャになりかねない。
先程のアリババテンセント本をはじめ、外国語のIT本には教えられることが多い良書が多々あるので、そちらの翻訳本を読むべき、

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経営
感想投稿日 : 2021年8月3日
読了日 : 2021年5月27日
本棚登録日 : 2021年4月16日

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