秘密 (文春文庫 ひ 13-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2001年5月10日発売)
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感想 : 3299
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フォローさせて頂いているアンシロさんお勧めの東野作品。

主人公・平介の妻・直子と小学生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。
娘だけが奇跡的に助かりますが、なんとその身体には妻の意識が宿っていて・・。

“転生したら、自分の娘だった”・・とは、またちょっと違うのですが、身体は少女(娘)、人格は大人の女性(妻)という、アンビリバボーな状況での奇妙な生活と、夫婦(父娘?)の困惑や葛藤が描かれています。
娘・藻奈美としての人生を生きようと決意する直子に対する、平介の複雑な心理描写がなんとも絶妙でお上手なんですよね。
ただ、物語の半ばでは平介の嫉妬心がエスカレートして、行動がストーカー化していく様子(“自分の家族”にストーカーってww)には、“あちゃ~・・(ノ_<;)”と、目を覆いたくなりました。
そして、バス事故の加害者側である、亡くなった運転手が超過酷労働をしていた背景も、もう一つのテーマとして話に深みを持たせていて、この運転手の遺族との接点が、終盤に思わぬ縁となってくるのも注目です。
そして、後半ではある異変が起こって家族の関係性が変わってくる展開になるのですが、結局ラストでは・・・それは「秘密」に隠された意味がオチになっているということなんですかね・・・ということで、なんとも切ない余韻が残る読後感でした。
個人的には、亡くなったバス運転手の娘、梶川逸美さんが幸せになっていてほしいです。

因みに、本書(文庫版)の巻末に、この作品の映画版に出演して、ちょっと前に世間をザワつかせた広末涼子さんが文書を寄稿されているのを読んで、却って映画版を見てみたくなった私でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2023年読了分
感想投稿日 : 2023年11月1日
読了日 : 2023年11月1日
本棚登録日 : 2023年11月1日

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